イチゴ「桃薫」の苗を無許可販売容疑 警視庁が11人摘発
イチゴ「桃薫(とうくん)」の苗を無許可で販売したなどとして警視庁は、会社員の男(64)=岐阜県養老町=と無職の男(25)=静岡県焼津市=を種苗法違反(育成者権の侵害)容疑で逮捕し、3日に発表した。また、同日、それぞれ同様に無許可販売したなどとして、男女9人を同容疑で書類送検した。いずれも容疑を認め、「小遣い稼ぎだった」「一獲千金を狙いたかった」などと供述しているという。 生活環境課によると、逮捕や書類送検の容疑は2022年4月~今年7月、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構」が品種登録した「桃薫」の苗について、許諾を得ずにフリマアプリで販売したり販売目的で保管したりするなどしたというもの。容疑者らはフリマアプリで買うなどした苗を、1株あたり150~1200円で販売したという。(吉村駿) ◇ 農林水産省によると、国に品種登録されている種苗は7千~8千種類。これらを育てて他人に販売するには、開発して品種登録を受けた「育成者」の許可が不可欠だ。「開発に膨大な時間と費用がかかるため」(同省)で、音楽の著作権と似た仕組みだという。 同省によると、イチゴの新種開発には5~10年かかる。さらに時間を要す農産品もあり、2006年に登録されたシャインマスカットは開発に30年以上かかったという。 ただ、インターネット上では無許可で売られる種苗が少なくない。こうしたものが出回れば、育成者は開発費用を回収できず、新たな品種を生み出せなくなるといい、同省の担当者は「日本の農業発展に影響を及ぼしかねない」と指摘する。 育成者の権利を守るには、買い手側の意識向上も大切だ。ホームセンターや園芸店では、許可を得て販売される場合が多く、農水省は、農産品の苗はこうした場所で買うよう呼びかけている。(吉村駿)
朝日新聞社