レクサスLBXに「強敵」登場!? “アルファロメオ最小のSUV”新型「ジュニア」で判明している真実とは? 「ミト後継車種」の気になる実力
新型「ジュニア」がポーランドで生産される理由とは
新型「ジュニア」の車体は、ジープ「アベンジャー」やフィアット「600e」などと同じく、ステランティスの電動モデル用プラットフォーム“e-CMP”を基本骨格として構成されています。「ジュニア」がポーランドで生産されるのは、そのためです。
ボディサイズは、イタリアの製品サイトによると全長4173mm、全幅1781mm、全高1505~1535mmとなっています。これは「ジュリエッタ」と「ミト」の間に位置する数値で、プジョー「2008」より少し短くなっています。 分かりやすいところでいうなら、レクサスの“小さな高級SUV”である「LBX」(全長4190×全幅1825×全高1545mm)と同じくらいのサイズ。いうまでもなく、日本の路上においても扱いやすいサイズですね。 それでいて新型「ジュニア」は、400リッターという荷室容量を確保しています。Bセグメントのクロスオーバーとしては十分な広さといえるでしょう。 ラインナップは、大きく分けて2系統。ひとつは、ブランド初の純粋なBEVである「エレットリカ=elettorica/電気式」。もうひとつは「トナーレ」のハイブリッドと同様、MHEV仕様となる「イブリダ=ibrida/ハイブリッド」です。 「エレットリカ」は、容量54kWhのリチウムイオンバッテリーをフロア下に敷き、モーターで前輪を駆動。出力は、ベースグレードでは156psと260Nmを発生します。数値だけを見るなら、ジープ「アベンジャー」やフィアット「600e」と共通ですが、出力特性を変えている可能性はあるでしょう。 それに、車重が1545kgと同クラスのライバルたちの平均よりおよそ200kg軽いということなので、スポーティな走りを期待できそうです。航続距離はWLTPモードで410km、市街地モードで590km。100kWの急速充電噐を使えば、残量10%から80%まで30分もかからずに充電可能で、ボンネットフード下には充電用ケーブルなどを収める“ケーブルオーガナイザー”が備わります。「そこそこ以上に実用的」といえるでしょう。 さらに後から「エレットリカ・ヴェローチェ」という高性能版が追加されることも発表されています。こちらの出力は240ps。スポーツサスペンション、前後高剛性アンチロールバー、トルセンLSD、φ380mmディスク+4ピストンモノブロックキャリパーのフロントブレーキ、20インチの専用タイヤなどが与えられた、よりスポーティな走りを楽しめる高性能モデルです。 対する「イブリダ」は、可変ジオメトリーターボつきの1.2リッター3気筒エンジンと6速DCT、そしてトランスミッションに組み込まれた28psの電気モーターで構成された48Vハイブリッドシステムを採用しています。 システム総合出力は136ps、車重は1305kgと軽い部類です。詳細は伝えられていないのですが、DCTにモーターが組み込まれていることから、システム自体は「トナーレ」のハイブリッドに搭載されるそれを進化させたものだと思われます。 MHEVながらモーターのみで走れる点も同様で、「ジュニア・イブリダ」は一般的な市街地では半分以上の時間を電動モードで走行でき、電動走行時の最高速度は150km/hまで引き上げられてるようです。 こちらも前輪駆動がメインとなりますが、後に4WDの「ジュニア・イブリダQ4」が追加されることが明らかにされています。このQ4モデルには、通常の“DNAシステム”にある3つの走行モードに加え、低グリップ用のモードも設定されるようです。 ●シャシーのセッティングはアルファ ロメオのエースが担当 新型「ジュニア」のシャシーについては、分からないことだらけです。トレッドもホイールベースも、サスペンション形式も前後重量配分も未発表。ただし、14.6:1というステアリングギア比だけは発表されていて、一般的な乗用車よりはクイックなものの、「ジュリア」、「ステルヴィオ」、「トナーレ」と比べればややスローな設定となっているようです。 BEVは内燃機関搭載モデルよりも重心位置がはるかに低いため、こういう設定になっているのか、それ以前に、「トナーレ」がMHEVとPHEV(プラグインハイブリッド)でレシオを変えているのと同様、BEVとMHEVで異なる設定となっているのか、その辺りも不明です。 それでも、新型「ジュニア」が間違いなく素晴らしいハンドリングフィールを持ち、ドライバーが走る楽しさを満喫できるクルマに仕上がってるだろうと予想できるのは、「ジュニア」のダイナミクスを担当したのがドメニコ・バニャスコ氏率いる開発チームだから。 バニャスコ氏というのは、「8C」、「4C」、「ジュリアGTA/GTAm」、「33ストラダーレ」といったモデルを担当してきた、アルファ ロメオのスペシャルビークル担当チーフエンジニア。いわばアルファ ロメオのエースなのです。 彼が手がけたクルマに、ハズレはありません。「トナーレ」でもロール軸のフロント側を低くセットすることで、俊敏で楽しいハンドリングを実現していました。バニャスコ氏のチームがどんな手を使ってBEVの運動性能をつくり上げたのか……期待は高まるばかりです。 * * * 新型「ジュニア」は現在、現地でローンチエディションである「スペチアーレ」の受注がスタートしていて、価格は「イブリダ・スペチアーレ」が3万1900ユーロから、「エレットリカ・スペチアーレ」が4万1500ユーロからとなっています。また、通常モデルは「エレットリカ」のみ価格が公表されていて、そちらは3万9500ユーロからとなっています。 「ミト」や「ジュリエッタ」からの乗り換え客の獲得も想定してるだけあって、なかなか頑張った価格設定になってると思います。為替の問題が気がかりではありますが、日本導入時も想像より手に入れやすい設定になるのでは? と期待しちゃいます。 現時点ではまだ分からないことの多い新型「ジュニア」ですが、おそらく続報がもたらされるのは2024年6月頃となりそう。イタリア・バロッコにあるテストコースで国際試乗会が開催されることになっているからです。そのときには、今回知りたくても知ることができなかったデータなども明らかになるでしょう。
嶋田智之