「ヤクザが仕事現場にもついて来た」借金10億円超を背負い自己破産寸前…“最後の銀幕スター”小林旭が経験した“どん底生活”
やくざの連中が、仕事の現場にもついて来て…
借金で首の回らなくなった小林のもとに、債権者やその筋の人たちが押しかけた。 「やくざの連中が、仕事の現場にもついて来てるわけだ。俺が『殺すなら、いつでも殺していい。その代わり明日から金は入らなくなるよ』、『今、歌わしときゃあ、小林旭は日に300万は稼ぐよ』って言うと、連中は黙ってたよ。実際にステージに立てば日銭を稼ぐから、俺をいじめに来た連中も次第に大事に扱ってくれるようになった。 自己破産も考えたけど、弁護士の先生が『お前、そんなことしたら国籍がなくなるぞ』なんて脅かすんだ。
先生は『俺の力でそのでかい借金返させてみせる』と言って、債権者会議を一手に仕切ってくれた。女房子供を箱根の別荘に隠してくれて、俺が何とかいきて行けるようにしてくれたんだからありがたいことだよ。その先生も、“バブルの最後の大物”と呼ばれた実業家のトラブルに巻き込まれて、ずいぶん苦労したようだけどね」
八方塞がりになった小林は、東京・品川の旧ホテルパシフィックに身を潜めた
八方塞がりで身動きが取れなくなった時期に、小林が身を潜めていたのは東京・品川の旧ホテルパシフィックである。債権者のひとりが、次の仕事が始まるまで潜伏するための部屋を用意してくれた。 「『芸は身を助ける』というけど、この時ほど俺に芸があってよかったと思ったことはない。先方にしてみれば、俺を見張るためにやったことかもしれないが、おかげでじっくり人生を見つめ直す時間ができたんだ。 散々な目には遭ったが、もし自分がサラリーマンだったら、果たしてあそこまで情熱を持っていろんなことができただろうかと考えた。裕ちゃんは『俳優は男子一生の仕事にあらず』と言っていたが、ひとつの職業に留まらざるを得ない人たちからすれば、俺がやってきたことはある意味では幸せなことだったのかもしれない。そういう人たちの憂さを晴らすために、俺たちは夢を託されたんじゃないかな。 何日も外に出ることができず、誰とも会わずに過ごす日々が辛くなかったと言えば嘘になる。たまたま同じホテルに(高倉)健さんが滞在していたんだ。優雅に過ごす健さんに比べて、俺は借金だらけの侘しい身の上。眠れない夜に部屋の窓から品川駅を見て、『あの線路を歩けば死ぬんだろうな』なんて弱気なことを考えたよ」
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