食卓を彩り続ける「開発魚」、変わりゆく日本の漁業
切り身や煮魚に利用される「ギンダラ」や「カラスガレイ」 ── 。日々の食卓を豊かに彩るこれらの魚は、実は「開発された魚」だ。これら「開発魚」が国内で流通するようになったのは、1970年以降の話だが、「開発魚」の開発も約20年前に終了している。この短い間に、日本の漁業と食卓ににいったいどんな変化があったのか?
人口増加に備え、魚を開発せよ
高度成長著しい1970年代初頭の日本では、人口増加や食生活水準の向上に備えて、食料の供給量を増やす必要性に迫られていた。 1971年、新たな漁場や魚介類の調査、事業可能性の検討などをおこなう公的機関として、旧海洋水産資源開発センター(のちに旧水産総合研究センター(現水産研究・教育機構)に統合)が設置され、それまで国内で流通していなかった魚介類を探し出すミッションが与えられた。そして、同センターが国内の流通に乗せた魚介類を「開発魚」と言った。 「開発魚」といっても、品種改良などによって新しい種類の魚介類を生み出すわけではなく、国内で流通してこなかった魚介類を新たに利用するための取り組みを指す。似た言葉に、従来食用としてきた魚介類の代わりに使われる「代用魚」があるが、開発魚は代用を前提としていない。 「ギンダラ」は、米国との共同で調査した魚。タラ類ではなく、カサゴ目ギンダラ科の魚で、開発当初は黒くて見栄えが悪いとしておもにすり身として流通していたが、その後切身や煮魚としても食されるようになった。「カラスガレイ」は、北極海やベーリング海、オホーツク海などに分布。回転寿しでおなじみのエンガワによく利用されている。 ほかにも「ガストロ」という魚がある。このキューバ革命の指導者に似た名前の魚は、白身魚のフライなどに使われている。「ガストロ」は肉質は白身でくせがなく、はえ縄漁でまぐろと一緒に獲れる。 同研究センターは、設立来、アカマンボウやキングクリップ、アメリカオオアカイカなど、計46種類もの魚介類を開発、新しい食料を供給してきた。食卓が豊かになったのは「開発魚」のおかげでもある。