ネットでつながる現代にリアルで集まる意味…160超の国・地域が参加する万博
万博考 祭典の意義<1>
あと122日で、160超の国・地域が参加する大阪・関西万博が開幕する。インターネットで世界中とつながる現代に、リアルで集まる意味は何か。万博は私たちにどんなものをもたらすのか。170年以上の歴史がある祭典の意義を考えたい。 【写真】失敗しても「まあいいか」な喫茶店…万博・関西パビリオン
多くの出会い、視野拡大
鹿児島港からフェリーで4時間。人口約120人の薩摩硫黄島に、アフリカの伝統楽器・ジャンベの音が響いた。小中学校「三島硫黄島学園」の子どもたちが、ギニア人のセク・ケイタさん(43)から身ぶり手ぶりを交えて演奏法を学ぶ。
同島のある鹿児島県三島村とギニアは、万博の参加国・地域と自治体を結ぶ政府の「万博国際交流プログラム」に選ばれ、同島の児童や生徒約20人が来年6月、万博会場の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)で演奏を披露することになった。
中村真人校長(56)は「島で育つと『知らない人』と話す機会がない。多くの人と出会う万博は、子どもたちが視野を広げる機会になる」と目を細める。
プログラムに参加したのは75の国・地域と89自治体に上る。来年4月の開幕前から、日本と海外との親交が育まれている。
渋沢栄一「各国に敬愛の念」
世界各国の文化や最先端技術が披露される万博は江戸時代後期の1851年、25か国が参加して英ロンドンで始まった。欧米列強による植民地獲得競争が激しかった時代。幕府の視察団の一員として67年のパリ万博を訪れた渋沢栄一は共著で、万博の効果をこう書き残している。「各国のあいだの憎悪心を消し、敬愛するの念を生じさせた」(「航西日記」)
参加国・地域は時代とともに拡大し、国内では1970年大阪万博が77、2005年愛知万博が121で、大阪・関西万博は160を超える。大阪での開催は18年の博覧会国際事務局(BIE)総会で、ロシアとの決選投票の末に決まった。
個人交流、対立超えて
戦闘が続くパレスチナとイスラエルや、ウクライナも参加する予定だ。
パレスチナ自治政府のワリード・シアム駐日常駐総代表部大使(69)は「国際紛争に中立的な立場を取り、人道支援を続けてきた日本は、和平を促進できる立場にある」と語り、日本での開催を歓迎する。万博の意義を「People to People」と表現し、「個人と個人が実際に出会い、交流することが重要だ」と語る。