イギリス保守党の新党首にケミ・ベイデノック前ビジネス貿易相…強硬右派、党勢立て直し目指す
【ロンドン=蒔田一彦】英最大野党・保守党は2日、新たな党首にケミ・ベイデノック前ビジネス貿易相が選ばれたと発表した。ベイデノック氏は党内の強硬右派として知られ、伝統的に「中道右派」の立場を取ってきた保守党の右傾化を印象付けた。ベイデノック氏は、7月の総選挙で歴史的大敗を喫して党首辞任を表明したスナク前首相に代わり、党勢の立て直しを目指す。
党首選には6人が立候補した。下院議員の投票で候補を2人に絞り、10月31日まで一般党員による決選投票が行われた。決選投票はベイデノック氏と、前政権で移民担当閣外相を務めたロバート・ジェンリック氏の強硬右派が対決した。ベイデノック氏の得票数は約5万4000票で、ジェンリック氏の約4万1000票を1万票以上、上回った。
ナイジェリア系のベイデノック氏は、強硬右派の代表格として頭角を現してきた女性政治家だ。労働党だけでなく、近年の保守党政権も「左派寄り」だったと批判し、「保守的な価値観を取り戻す」と訴える。党首選勝利を受けた2日の演説では「真実を語り、我々の政治と考え方をリセットし、我が党と我が国にふさわしい新たなスタートを切る時が来た」と呼びかけた。
保守党に強硬右派の党首が誕生する背景には、党内の右傾化に加え、7月の総選挙で保守票が反移民政党・改革党に流れたことへの危機感がある。移民問題などで強硬姿勢をアピールし、保守層の支持を取り戻したい考えだ。
ただ、党勢回復の道は険しい。党首選の投票率は約73%で、英メディアによると1998年以降最低だった。調査会社ユーガブが1日に発表した世論調査結果では、総選挙で保守党に投票した人のうちベイデノック氏に好感を持っているのは35%で、好感を持っていない人も29%に上った。党の右傾化は中道層の離反を招き、政権奪取がかえって難しくなるとの見方もある。