多発する銅線ケーブル盗、「金属くず」の不正買い取り横行か…警視庁などが業者4社を一斉捜索
買い取り業者への規制「強化を」
一度使用されたものの買い取りを巡っては、盗品の流通防止のため、古物営業法で業者に取引相手の本人確認が義務づけられている。だが、切断されたケーブルは「金属くず」とみなされ、同法の適用対象外になっている。
条例で本人確認を義務づける自治体もあるが、18日現在で17道府県にとどまる。条例は、朝鮮戦争(1950~53年)による金属価格の高騰で金属盗が多発したことから制定されたものが多く、沈静化とともに廃止した自治体もある。
警察庁は7月、都道府県警に摘発の強化を指示。9月には有識者検討会を発足させ、盗品の流通を絶つ法規制のあり方を探っている。
茨城県内で太陽光発電施設を管理する「つくば電気通信」(土浦市)は約20か所の施設で被害に遭った。同社の担当者は、「買い取り業者への規制を強化しなければ、今後も被害は続くだろう。早急に法整備を進めてほしい」と語った。
銅線ケーブルのアルミ転換が広がる
金属盗が相次ぐなか、製品の素材を安価のアルミに替える動きが広がっている。昨年、銅線ケーブル計約1万メートル(約1億円)が盗まれた山梨県南アルプス市の太陽光発電施設や、橋から銅と亜鉛の合金銘板19枚(計95万円)が盗まれた静岡県島田市では、代替品にアルミを使った。
電線大手の「古河電気工業」(東京)によると、アルミの電気伝導率は銅の6割ほどだが、ケーブルのサイズを少し太くすれば、機能に問題はない。同施設からのアルミケーブルの注文は、2020年の数件から、今年は8月末時点で約440件に上った。同社の関連会社の担当者によると、太陽光発電施設では、切断されたアルミケーブルが放置されていたケースもあった。売却しても「金にならない」と放置された可能性がある。(甲府支局 瀬田糸織)