ベスパ「GTV 300」なら、モノコックフレーム+前後12インチならではのキビキキビ感を堪能できる
ベスパならではの、気軽さと楽しさ
さて、ここまでを振り返ると、なんだか新鮮味が希薄な話になってしまいましたが、久しぶりにベスパを走らせた私(筆者:中村友彦)は、やっぱりスチール製モノコックボディと前後12インチタイヤは気軽で楽しい!! と感じました。
実際に試乗して最初に感じた美点は、乗り降りの容易さです。近年の原付2種以上のスクーターは、センタートンネル構造のパイプフレームと13~15インチタイヤが増えていて、そういうモデルは乗降時に跨ぐ動作が必要になります。 しかし昔ながらのスタイルと構成を維持しているベスパの場合は、椅子に腰かけるような感覚で、気軽に接することが可能なのです。 もっとも、エンジンを始動して走り始めると、極低速域では何となく車体の落ち着きの悪さを感じます。その主な原因は、現代のスクーターでは小径となる前後12インチタイヤと、ライダー込みの重心の高さですが、後にいろいろな場面を走ってキビキビした乗り味を実感した私は、そのあたりに異論を述べようという気持ちにはなりませんでした。 ちなみにシート高は790mmで、参考までに「バーグマン400」は755mm、「C 400 GT」は775mmです。 そう、ベスパの乗り味はとにかくキビキビしているのです。小径タイヤと高めの重心に加えて、そういったフィーリングのキモになるのは、外装が骨格を兼ねるモノコックフレームです。 もちろん、モノコックフレームを採用するすべてのスクーターが、ベスパと同様の乗り味を実現しているわけではないですが、「GTV 300」のダイレクト感や運動性を認識した私は、やっぱりベスパはこの骨格の勘所を熟知しているんだな……と感じました。
排気量を拡大した、新エンジンの登場
2024年11月のEICMAで、ベスパは「GTS 300」の後継となる「GTS 310」を発表しました。この車両の特徴は排気量を278から310ccに拡大したエンジンで、最高出力は23.8ps/8250rpmから25ps/6500rpmに、最大トルクは26Nm/5250rpmから28.9Nm/5250rpmに向上しています。
そして310ccの新エンジンは今後は他機種にも転用されるはずですから、となれば「GTV 300」の購入を考えている人は、今は「待ち」の状況でしょう。 でも私自身は、「べつに待たなくてもいいんじゃないか……?」という気がしています。もちろん、新エンジンの性能は魅力的ですが、「GTV 310」(仮)が登場したからと言って「GTV 300」の価値が下がるわけではないのですから。 このあたりもベスパならではの面白いところで、やっぱりイタリアンスクーターの老舗は、唯一無二の地位を獲得しているのだと思います。
中村友彦