遠い恒星へと旅するのに必要な驚愕のエネルギー 光速の50%を超える速度で飛行するとしたら
じつのところ、これらの過程にもさまざまな非効率性があり、星間ミッション実施までの道のりを一層困難にしているのだ。 恒星間の途方もない距離を現実的な長さの時間で移動するには、高速飛行が実現できるような推進システムの開発が鍵になる。 ■高速で飛行する宇宙船が衝突したら? そもそも、それほどの高速での飛行自体が、大きな問題を孕んでいる。先ほど述べたように、現実的な最小の星間宇宙機は質量が1キログラムで、0.1cで飛行しているときには、450兆ジュールの運動エネルギー(その運動に付随するエネルギー)を持っている。
宇宙船の指向性をコントロールする技術や進路指示(ナビゲーション)技術が不十分で、探査機がコースから外れてしまい、ある惑星に想定外の衝突をしたとすると、探査機は衝突した瞬間に爆発して、持っていたエネルギーをすべて解放するだろう。 その破壊力は広島に投下された原子爆弾7個分(1個当たり15キロトン)に相当する。そしてこれは、平均的なマスクメロン1個分の重さの宇宙船の場合の話だ。0.1cで飛行するボイジャー級の宇宙船なら、7万9000キロトンのエネルギーで衝突することになる――広島型原爆5000個を優に超える!
そして、ここまでの話では、宇宙船は光速の10%の速度でしか飛行していない。超高速星間旅行が実現したとき、それに使われる宇宙船には光速の50%を超える速度で飛行しなければならない。こんな速度になると、マスクメロンぐらいの宇宙機でも広島型原爆220個分のエネルギーになる。 太陽系以外の恒星系への初の使節団が、せっかく人類初の異星人との接触を果たすところだったのに(目的地に異星人がいたとしてだが)、着陸で失敗して、奇襲攻撃と誤解されないようにしなければ!
(翻訳:吉田三知世)
レス・ジョンソン :物理学者、NASAテクノロジスト