「母乳飲ませる練習しているの?」 夫の言葉に傷ついた…母乳育児に悩む母親たち #令和の親
「母乳飲ませる練習しているの?」。思うように母乳が出ない中、夫からそんな言葉をかけられショックを受けた。それでも母乳は出ない―。厚生労働省の調査(2015年度)では、妊娠中に母乳で育てたいと思った人の割合は9割を超えるなど、母乳育児への関心は高い。一方で、8割近くが授乳について「困ったことがある」と回答しており、母乳の量などに関して悩みを抱える母親は少なくない。専門家は「周りが母親の気持ちを否定しないことが大切。自分の気持ちを受け止めてくれる支援先を頼って」と訴える。(デジタル編集部・町香菜美)
産んだら出るものと思っていた
「出産前は産んだら母乳は何とか出るものだと思っていました」。 長男(5)と次男(1)を育てる市川市の女性(42)はこう振り返った。長男を出産後、入院していた病院で母乳指導を受けた。ただ、長男は乳首がうまくくわえられず、泣いてしまう―の繰り返しで次第に母乳育児がつらくなった。搾乳機を使うことになったが、絞っても10ccほどしか出ず、すぐ次の授乳時間に。初めての育児で手一杯の中での作業に疲労が募り、子どもの夜泣きも重なって睡眠不足にもなった。 ミルクに抵抗はなかったが、実際に母乳が出ない現実に直面すると劣等感やうしろめたさを感じるようになった。「母乳飲ませる練習しているの?」。そんな中、夫から心ない言葉をかけられ、深く傷ついた。結局、産後1カ月検診で、長男が「少し痩せ気味」と言われたのを機に、ミルク中心に切り替えた。
「自信なくし号泣」SNSにあふれる母親の声
母乳育児への関心は高い。厚労省が行った2015年度の乳幼児栄養調査では、生後1カ月で母乳のみで育てる母親は51・3%だが、粉ミルクと併用する「混合」を含むと全体の約9割に上り、妊娠中に「母乳で育てたい」と回答した母親は9割を超えた。 厚労省の「授乳・離乳の支援ガイド」では母乳育児の利点として、感染症発症の減少などさまざまな点を紹介している。 一方で「母乳が足りているかどうかわからない」「思うように出ない」との悩みを抱える母親も少なくない。同調査では、77・8%が授乳について「困ったことがある」と回答。具体的には「母乳が足りているかどうかわからない」が40・7%、「母乳が不足気味」が20・4%、「授乳が負担・大変」20・0%の順で多かった。SNS上にも「母乳が出るなら母乳で育ててみたかった」「母乳が出ない自分に自信をなくして号泣してしまった」などと、追い詰められている母親たちの声があふれる。 市川市の女性も、不安になるとついネットの情報を検索し、誤情報に惑わされたこともあった。「出産後、母乳のことを気軽に相談できる場所がなかった。どうしたら良いのか、どう進めたら良いのか分からなかった」。こうした母親たちの悩みにつけ込むかのように、インターネット上には母乳と称するものを販売しているケースも。千葉県内の自治体ホームページでも、第三者がネットで販売する母乳は感染症や衛生上の危険が伴うとして注意を呼び掛けている。