2024年から年額1000円「森林環境税」の目的とは?「森がない都市部の住民」から徴収に不満の声も…“環境保全”の意義
交付金を有効活用するための人員育成が課題
6月に放送された「モーニングショー」(テレ朝系)では、渋谷区には2019年から2023年の5年間で約9900万円の森林環境譲与税が配分されたが、そのうち実際に使用されたのは約900万円のみであり、残り約9000万円は積み立てられていることが報道された。 渋谷区に限らず、多くの自治体で森林環境譲与税が活用されずに積み立てられてきたことは事実だ。しかし、配分が開始されてからの数年間を通じて、各自治体は徐々に本格的な有効活用を始めるようになったという。 「配分が開始された当初は、有効活用するためのノウハウも共有されておらず、そもそも担当する人員も自治体では不足していたために、使い方がわからずに積み立てられてきたという側面があります。 今後も、各自治体で、森林管理を担当する人員を適切に育成・活用することが課題になります」(香坂教授)
復興税からスライドした「ステルス増税」との批判も
6月以降に森林環境税の徴収が始まったことにより、個々の納税者が支払う税金の総額が以前よりも増えたわけではない。同額の1000円を住民税に上乗せし徴収されてきた「特別復興税」の徴収が5月に終了したためだ。 日本に限らず、自然保護や環境に関する税金を新たに導入することは大きな抵抗を受けやすい。香坂教授によると、海外の識者は、日本で森林環境税が導入されたことを聞くと驚くという。 日本では復興税から森林環境税への実質的な「スライド」により、議論や煩雑な手続きを回避して導入されたように見える。 これについて、国民に対して十分な説明を行わずに森林環境税を導入して、実質的に1000円の税金上乗せを継続する方法が「ステルス増税」であるとの批判もされているようだ。 さらに、住んでいる場所や収入に関係なく、すべての対象者から一律に同額を徴収することについては「徴収の仕方が乱暴だ」「まるで『人頭税』だ」などの声も一部で上がっている。 2019年には、財政学や租税論を専門とする青木宗明教授(神奈川大)が「国税・森林環境税:租税理論に反する不公平極まりない増税」と題した論考を発表。 香坂教授は「税金の公平性が非常に難しい問題であることは、研究や現場を通じてよく理解しています」としつつ、森林環境税の意義を強調した。 「気候変動が進むなか、森林の役割が世界的に見直されています。 税金を払うことが、日本の森林の現在や将来について、個々の納税者が考えるきっかけになることを願います」(香坂教授)
弁護士JP編集部