2024年から年額1000円「森林環境税」の目的とは?「森がない都市部の住民」から徴収に不満の声も…“環境保全”の意義
府県の「環境税」との「二重取り」にあたるか?
森林などの環境保全を目的とした税は、すでに37の府県で独自に導入されている。 名称はそれぞれ異なり、例を挙げると大阪府は「大阪府森林環境税」、京都府は「京都府豊かな森を育てる府民税」、愛知県は「あいち森と緑づくり税」だ。 これら府県の住民は、府県による「森林税」と国による「森林環境税」の両方を徴収されるため、同じ使途の税金の「二重取り」なのではないかとの見方もある。 さらに、横浜市民の場合は神奈川県の「水源環境保全税」と横浜市の「横浜みどり税」の両方をすでに徴収されているため、森林環境税が加われば環境保全に関わる税金の「三重取り」になるとも報道されている。 香坂教授によると、府県ではなく国による「森林環境税」を導入する意義は、都道府県の境界をまたいで、私有林の管理のために財源を必要としている市町村への効率的な配分を実現できる点にあるという。 「また、各府県による環境税の目的には『公益的な機能を持つ森林や環境を維持する』ことなどが入っているケースも多いです。私有林の管理を目的とする国の『森林環境税』とは税金としての役割や目的が異なるため、必ずしも『二重取り』という指摘はあたりません」(香坂教授)
都市部の住民からは徴収に不満の声もあるが…
日本は世界有数の「森林大国」だ。天然林と人工林、また竹林などの森林面積が国土面積に占める割合(森林率)は約66%。先進国(OECD諸国)のなかでもフィンランド、スウェーデンに次いで第3位の森林率である。 ただし、都道府県ごとの森林率には、大幅な差がある。林野庁の統計情報によると、2022年時点では高知県が84%と最も高く、岐阜県の81%、長野県の79%と続く。一方で最も低い千葉県は29%であり、大阪府は30%、茨城県や埼玉県も31%だ。 東京都の森林率は36%だが、その森林の約7割は多摩地域西部、約3割は島しょ地域にある。渋谷区をはじめとして、23区に森林はない。 上記のような偏りがあるため、Xには「森ゼロなのに他の自治体を真似してとりあえず森林環境税を徴収している渋谷区」などの声も投稿されている。つまり、都市部には「なぜ森林がない自治体に住む自分たちも、他の地域と同額を徴収されなければならないのか」と不満を抱く住民もいる。 このような疑問に対して、香坂教授は「私有林の適切な管理を通じて日本の自然環境や地球温暖化の問題が改善されることは、長期的には都市部の住民にとっても利益になる」と答える。 「また、木材を有効活用することで、都市部の建造物を建築・改築する際に、木材を多く利用する『木質化』を行うことも可能になります。 建造物の木質化は地球温暖化の防止に寄与するだけでなく、居心地をよくしたり、室内環境を改善してインフルエンザなどの感染症にかかるリスクを低減したりする可能性があるなど、その建造物を利用する人々にとっても利益になります」(香坂教授)