旧車レストア×ヤマハトレールDT1☆フルレストアにチャレンジ☆Vol.7 サスがしっかり作動してこそ快調旧車!!前後サスのオイル交換に挑戦
実走行で「オイル漏れが無ければラッキー」と考えよう
タイヤを組み込んだホイールがあって、前後サスが完成すれば、一気に車体は組み立て進行できる。押し歩きできる姿まで作業が進むと、そこから先は時間の問題だろう。タイヤを取り付けて転がせるようになると、時間を忘れて夜な夜な作業になってしまいます……。組み付けられる部品が手元にあれば、のんびり作業でも、丸1日あれば車体はほぼ完成域に達してしまうのがDT1だろう。構成部品点数が少ないので、まるでコンペティションモデルのようでもある。 ■POINT ポイント1・フロントフォークの分解組み立て時には各パーツのコンディションを確認し、Oリングやオイルシールなどの消耗品は新品部品に必ず交換しよう ポイント2・分解組み立て時に特殊工具が必要な場合は、無理して分解することなく特殊工具を準備しよう ヤマハDT1が開発されたのは1960年代の後半。その頃の前後サスペンションと言えば、一般的なオイルダンパー仕様が当たり前の時代で、窒素ガスを封入したリヤショックユニットなどは、一般市販車への採用例が無かった時代だった。そんな時代に誕生したDT1は、ダンパーロッドのアッパーエンド兼シールヘッドが、後の量産車に多いカシメタイプではなく「ネジ込みエンド」が採用されていた。この時期が、いわゆる技術的端境期となっていたのが当時のカヤバ(現KYB)らしく、同じカヤバ製リヤショックを採用していたカワサキマッハⅢの場合も1969年式はDT1と同じ分解可能な仕様で、1970年式はカシメ固定仕様へと変更されていた。 このDT1は、トレールクラブの加藤さん(パウダーコーティングカトーさん)がペイント前のフレームを見たときに「1969年の初期だね!?」とお話しして下さったが、フレーム番号からしてそれは間違いなさそう。それ故に、旧タイプの分解可能な(非分解指定部品ではありますが)、リヤショックが取り付けられていたのではないかと思う。 そんなリヤショックだが、車体に装着されていた時は、減衰力は無く、ボヨヨ~ンとハネてしまうコンディションだった。仕方ないので取り外し、unitのスプリングコンプレッサーEX(リヤサス分解特殊工具)を利用して、ダンパーボディーとスプリングをセパレートに分解した。各単品パーツを磨きながら作業していた時に、リアサスのダンパーユニットのエンドキャップ兼シールヘッドが「組み立て式=ネジ込み式」であることに気が付いた。このタイプなら分解洗浄が可能なので、新しいダンパーオイルを封入することで、減衰性能が生き返る可能性も……? ピンスパナでエンドキャップを抜き取ると、ボディ内からダンパーユニットが出てきた。空になった鉄ボディの中を覗き込むと、シリンダーとなる筒が組み込まれた「複筒式ダンパーユニット」だった。ダメもとのつもりで、出てきたダンパーユニットをしっかり洗浄してからエアーブロー。エンドキャップ兼シールヘッド用のOリングは、ほぼ同じサイズを見つけられたので新品部品に交換。ダンパーロッド用のオイルシールは、簡単に見つかるものではないので、取り敢えずは交換せずそのまま復元してみた。ダンパーオイル量の調整とエアー抜き作業を、何度も、何度も、何度も、繰り返し行いながら、エンドキャップ兼シールヘッドを復元した。この復元作業中に、何と!?ダンパー機能が回復しつつあることに気が付いた。正直、かなりいい感じの減衰作動性なのだ。この状況を維持したままでオイル漏れが無ければラッキーだが、このあたりの善し悪しは、実走行してみないとわからないので、手放しで喜ぶことはできない。 フロントフォークに関しては、レースキットに匹敵する素晴らしい内部構造を採用しているヤマハDT1。新品インナーチューブが手元にあったが、組み込もうとすると初期型用ではないことが判明……。仕方ないので、サビサビ部品を福岡県の東洋硬化さんへ発送した。繁忙期になると納品日時は前後してしまうと思うが、ぼくがお願いしたタイミングでは、約3週間の納期だった。組み立て作業時には、再生ハードクロームメッキの素晴らしい仕上がりを凝視。メーカー純正新品部品の仕上がりよりも、クロームメッキ仕上げ膜が厚く=サビに強い特徴があるのが東洋硬化の再生ハードクロームメッキである。足周り部品が揃ったことで、組み立て作業を一気に進めることができた。そんな車体部品の組み付け時には、摺動可動部へのグリスアップをしっかり行うように心掛けよう。
たぐちかつみ