ロシアによるウクライナへの長距離ドローン攻撃が激増 中国製も使い始めた可能性
ロシアによるドローン(無人機)を用いたウクライナに対する戦略爆撃が、これまでなかったほど激しくなっている。シャヘド型長距離ドローンによる攻撃は2024年を通じて徐々に増えてきていたが、9月に激増し、1300機あまりの飛来が報告された。これは過去のどの月と比べても格段に多い。データをたんねんにまとめているアナリストの「Shahed Tracker」によれば、飛来がその月に毎日記録されたのも初めてのことだった。 ロシアが送り込んでいるドローンのほとんどは撃墜されているものの、なかにはウクライナ側の防空網をすり抜けて大きな損害をもたらすものもある。ロシアによる長距離ドローン攻撃数が引き続き高い水準で推移すれば、この戦争が始まって以来、ウクライナにとって最も厳しい冬になるおそれがある。 ウクライナ側はこれらのドローンを「シャヘド」と一括りにしているが、イランで設計された本家シャヘドのほかに、少なくとも3種類のドローンが使われていることを示す兆候が強まっている。一部は中国から直接供給されている可能性がある。 こうした攻撃は戦略的にきわめて重要な意味をもつ。ウクライナの電力インフラはすでに深刻なダメージを受けている。ワシントン・ポスト紙は今週、「1日4時間程度の停電で済むというのが最良のシナリオだが、ウクライナは厳冬期に1日20時間以上の停電を余儀なくされる可能性もある」との見方を示している。 攻撃数がこの冬にかけても高い水準で続けば、ウクライナの経済や士気に大きな影響を及ぼしかねない。ロシアは現在、ウクライナ国内に対する長距離爆撃にどのようなドローンを差し向けているのだろうか。 ■イラン設計・ロシア生産の「シャヘド」 攻撃の主力になっているのは「シャヘド136」で、ロシアでは「ゲラニ2」と呼ばれている(ゲラニはロシア語で「ゼラニウム」の意味)。イランが開発した使い捨て攻撃ドローンであるシャヘド136は、翼幅2.5m、弾頭重量約50kg、航続距離は1000km以上ある。プロペラ機で巡航速度は最高で185km/hほどしか出ないので、通常の巡航ミサイルに比べると遅く、威力も劣り、迎撃されやすい。半面、コストははるかに安く、大量生産できるというメリットがある。ロシアは西部の都市エラブガに新設した巨大工場で、近くの工科大学の学生やアフリカ出身の労働者など安価な労働力を使ってシャヘドを製造している。