文化大革命で破壊された内蒙古寺院 修復作業であったたくさんの残念なこと
私が日本に留学した後、経済発展によって、シリンホト市も観光都市として、この寺の復旧作業を行った。昔、市場があったところは広場になり、寺も真っ赤な壁に囲まれ、立派な本堂が再建された。しかし、あの弾痕は完全に消されていた。私にとってこれは一番、残念なことだった。それは歴史の記録であり、ある意味で大切に保護すべき文化財だからだ。 しかも真っ赤な壁は、夏の雨ですぐに色あせた。昔の寺の壁は、何百年たってもかつて色あせしなかったのは、職人たちが細かく顔料を調整したからだ。現在の修復作業は、市販の現存する顔料をそのまま使うだけである。 そして、彫刻に施された顔料の色も忠実に修復されなかったばかりか、むしろ妙な色使いで、元の美しい色すら消されてしまった。要は観光資源を開発するのが目的で、本物の文化財を保護し、歴史に残すことの大切さに対し、地方官僚から関係する学者たちまで、あまりにも無関心だということに失望するばかりである。 (つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第7回」の一部を抜粋しました。
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。