「中国式の恐怖」国から“押しつけられる”結婚と出産 著しい少子化を背景に…
■背景には著しい“少子化”が…
どうしてこのような“押しつけがましい”政策が行われているのか。背景には、中国で深刻な「結婚件数の減少」と「出生率の低下」がある。 中国・民政省が発表した2024年1月から9月の結婚件数は約475万組と、前年の同じ時期より100万組近く減少し、初めて500万組を割って史上最低になった。さらに去年生まれた子供の数は902万人と、7年間で約半分にまで落ち込んだ。2016年に「一人っ子政策」を撤廃した後も少子化に歯止めはかからず、「子供を増やすこと」が国家目標になっているのだ。 習主席は「若者の恋愛や結婚、出産、家族観への指導を強化する」よう指示していて、それを受けた地元政府などが「結婚学校」などの取り組みを進めている。 「結婚学校」が作られた長沙市以外に、北京市内の公園でも「適切な年齢で結婚し子育てをしよう」と呼びかける看板が掲げられ、その下には家族の人形が並んでいる。そこにいる子供の人形の数は、国が提唱する「3人」だった。街中にある小さな公園にいたるまで、習主席の号令実現に向けたスローガンを人々にすり込むための場になっている。
■「個人の意思が尊重されるべきだ」
しかし、結婚や出産をめぐる問題を中国の若者に聞くと、聞こえてきたのは様々な“圧力”だった。「結納金が高い」「経済不況だけど教育費が高い。子供を良い学校に入れなければ競争を勝ち抜けないから仕方ない」など、金銭面を心配する声が聞かれた。 一方、複数の女性が口にしたのは、結婚や出産に対して個人の考えがないがしろにされているという不満だった。ある10代の女性は「自分が楽しいと思えれば結婚する。人それぞれ自分の生き方がある。他人から考え方を強制されるべきではない」と話した。 妊娠中の女性にも話を聞くと、彼女は少し考え込んだ末にきっぱりと答えた。 「これは個人の意思の問題だ。国の政策が良いか悪いかは分からない。でも、人々の結婚や出産への考え方も環境もそれぞれだから、もっと個人の意思を尊重すべきだ」