「ラグビーの原点」から逃げなかったBL東京、後半の逆転劇につながった“モメンタム”の源流【リーグワンPO準決勝】
逆転のトライが生まれるのは、後半開始早々の42分。ラインアウトからのサインプレーで、SOリッチー・モウンガ、WTBジョネ・ナイカブラとつなぎ、仕上げはFL佐々木剛が右中間へと飛び込んだ。53分にPGで3点を返されるも、その後、FLシャノン・フリゼル、さらにこの日何度となく鋭いランを見せていたナイカブラがトライを重ね、28-13と一気にスコアを広げるのだ。 「前半、相手22mラインに4回入りながら、一度しかスコアにつなげられなかった」と、試合後に田中澄憲監督が嘆いた東京SGとは対照的に、BL東京にはワンチャンスをモノにする決定力があった。 粘る東京SGも74分に1トライを返すが、反撃もここまで。BL東京が決勝へと駒を進めた。相手は、今季無敗の埼玉パナソニックワイルドナイツだ。3月の交流戦では、好勝負を演じたものの24-36で敗れている。はたして、勝算は──。 オールブラックスの一員として、数々の大舞台を踏んできたフリゼルは言う。 「決勝戦というのは、リーグ戦とはまったくの別物。たとえ無敗のチームでも、必ず弱みはある。今までとは違う顔も覗かせるはずで、そこを突けば勝機はあると思う」 22歳の若き日本代表LO、ワーナー・ディアンズは今季のBL東京の強さをこう語る。 「トライを取られても焦らず、自分たちのDNAに戻れる。我慢強く自分たちのラグビーにフォーカスすることで、モメンタムを生み出せている」 BL東京のDNA──。すなわちそれは、リーチの言う「ラグビーの原点(接点)から逃げず、ボールを持ったら前に出る」ラグビーなのだろう。 それを貫けば、長く優勝から遠ざかり、いつしか「古豪」と呼ばれるようになったBL東京が、東芝時代のような「強豪」に戻れる日も来るはずだ。5月26日、国立競技場での下剋上に期待したい。 取材・文●吉田治良