米「急速利下げ局面」終了、来年は利上げもあり得る?【播摩卓士の経済コラム】
アメリカのFRB=連邦準備制度理事会が、0.25%の追加利下げを決定しました。根強いインフレを背景に、パウエル議長は「ここから新しい局面に入った」と述べて、今後の利下げ判断は慎重に行う考えを強調しました。 【CGで見る】米「急速利下げ局面」終了、来年は利上げもあり得る? ■9月から合計1%の急速利下げ アメリカの中央銀行にあたるFRBは、21日、政策金利を0.25%引き下げて、4.25~4.5%にすることを決めました。利下げは3会合連続です。9月以来、合計1%もの急速利下げを行ったことになります。一時9%にまで達したインフレを抑えるために大きく引き上げた金利を、インフレの沈静化を受けて、調整するためでした。 FRBが急速な引き締めを行った際には、アメリカ経済の減速を心配する声も強かったのですが、経済は予想以上に堅調で、失業もさほど増えず、パウエル議長は「景気後退を回避できたことは明らかだ」と胸を張りました。 ■来年の利下げ見通しは2回に修正 FRBは今回、新しい経済見通しを発表。来年の利下げについては、これまでの4回(1%)から、2回(0.5%)へと大きく下方修正しました。想定以上にアメリカ経済が強いからです。 今年の実質経済成長率の見通しは、9月時点の2.0%から2.5%へと大きく上方修正されました。こうした強い景気を反映して、来年のインフレ率(PCE指数)予想は、2.1%から2.5%へと上振れしました。FRBが目標とする2%への距離はまだかなりあるわけです。物価指数をグラフにしてみると、この数か月でインフレ鈍化は、少なくとも足踏み、見方によっては底打ちしたかのようにさえ見えます。 パウエル議長は、「ここから新しい局面に入った。更なる利下げは慎重に検討する必要がある」と述べて、利下げ継続とは言っても、質的には局面が転換したことを強く印象付けました。 ■市場は来年の利下げに懐疑的 「タカ派的利下げ」との見出しに代表されるように、パウエル議長の会見は、今後の利下げの見通しよりも、利下げ一時停止の理由を述べる場面が多く、「そんなに心配なら今回利下げを見送ればよかったのに」と、突っ込みたくなる内容でした。当然、市場にはショックが走りました。