卓球で得たものを社会人生活に活かすたったひとつの方法 日学連新会長就任・菱洋エレクトロ社長 中村守孝氏インタビュー【後編】
「愛社精神はあまりない」
中村守孝社長:一方今でも私は弊社に対して、情緒的、感傷的な愛社精神はあまりないです。前職は百貨店ですし、もともとマスコミ志望の人間なので。口はばったいですが、会社や業界の区別なく通用するジェネラリストでいたいと思っています。 従業員はとても大事ですよ。でも会社や業界の風土は私の本来の感性とはあまり合わない。合わないんだけれど、一方で、大きな感謝がありました。 ――感謝、ですか。 中村守孝社長:愛着のあった前職を離れた私を、菱洋エレクトロのみんなが受け入れて、わけのわからない他所者をリーダーとしてここまで一緒にやってきてくれた、その感謝は大いにあるわけです。 だったら恩返しとして、みんなが安心して働き、成長できる環境づくりをしておきたいなと。
「常に孤独」
――それだけ大きな改革を推進していくと、寂しさや孤独はないんですか。 中村守孝社長:常に孤独ですよね、正直言えば。本音で接してくれる人ばかりでもありません。 社長は強いんだ、絶対大丈夫なんだ、と周りは思ってるから、解消のしようがないです。(笑)この6年よく大病もせずにやりましたよ、振り返ると。 ――そうなんですね。 中村守孝社長:リーダーをやっていると、それはもうほとんどストレスのかかることだらけです。 でもそのプレッシャーに打ち勝つことがやり甲斐なんだと思うわけです。そのうちプレッシャーそのものが快感になったり(笑)。 ――はい(笑)。 中村守孝社長:人はそれぞれたった1回の人生じゃないですか。 私、自分の人生あんまり後悔したくないので。 だから楽しく、存分に力を出して、できるだけやって、それで物事がうまく行かなかったら、いつでも私は退く覚悟はできています。 会社は、自分で借金をすることもなく、ちゃんと給料をもらいながら、やりたいことをやって人生を充実させることができる場所であると考えると、仕事は本来とても楽しいものではないでしょうか。
取材を終えて
「あとは好きなようにまとめてください、末永くよろしく」 忙しいプロ経営者は、清々しく風のように去っていった。時計を見ると、あっという間に2時間が過ぎている。 かつて、伊勢丹と三越という、水と油と言われた異文化同士の企業統合を牽引した男。いま、半導体商社の業界で、菱洋エレクトロとリョーサンの統合を発表し、台風の目となっている。 このプロ経営者の手腕にかかれば、例えば卓球業界の懸案のひとつ、日本卓球リーグとTリーグが統合していく未来もあり得るのではないか、そんなことも夢想した。 (終わり)
槌谷昭人(ラリーズ編集長)