卓球で得たものを社会人生活に活かすたったひとつの方法 日学連新会長就任・菱洋エレクトロ社長 中村守孝氏インタビュー【後編】
かつて三越と伊勢丹の経営統合を牽引した男が、いま、半導体商社の世界の風雲児として、菱洋エレクトロとリョーサンの経営統合に臨んでいる。 菱洋エレクトロ代表取締役社長・中村守孝は、卓球部出身である。めずらしい。 その中村守孝社長が、日本学生卓球連盟の会長に就任したというニュースが飛び込んできた。 日本には大学で卓球部に所属する学生が約7000人もいる。「ぜひ卓球をしている若い人にアドバイスを」と話を振ると、返ってきたのは意外な言葉だった。 <中村守孝(なかむら もりたか)氏・略歴> 1959年生まれ、東京都出身。慶応大学卒業後、伊勢丹(現三越伊勢丹)に入社。2016年常務執行役員。2017年菱洋エレクトロに特別顧問として入社、2018年より代表取締役社長。2024年4月リョーサン菱洋ホールディングス代表取締役社長就任予定。
卓球で得たものを社会に活かせるのか
――経営者として、卓球部の学生や若い社会人に向けても、ぜひアドバイスをください。 中村守孝社長:卓球界の諸先輩方には怒られてしまうかもしれないけれど卓球で得た何かを社会に活かしてくださいって言っても、単にそのことだけではあまり活かせないような気がするんですよ。 卓球部だったら培えるけど、同好会だったら培えないことってあるんですかね。ラグビー部だったらこれが培えて、卓球部だったらこれが培えます、そんな単純なことですかね、社会に出るって。
「社会は好きとは限らないことや理不尽さだらけ」
――ひとつのことをずっと続けられる持続力、とかでしょうか。 中村守孝社長:だって、好きでやってきたんでしょう、卓球を。好きなことだからこそ理不尽なことにも耐えられたかもしれない、という意識が仮にあるなら、好きなことばかりとは限らず、かつ理不尽さだらけですよ、社会は。 運動部におけるシゴキに耐えられたから社会のいろんなことに耐えられるなんていうのは、せいぜい平社員の段階です。そんな経験しかない人間は、管理職になった瞬間に人を潰してしまいます。そして、最後は自分が潰れます。 ――なるほど。 中村守孝社長:敢えて言うならば、卓球にスポーツとして向き合う中で、チームの一員としての他のメンバーへの貢献、リーダーシップ、協働関係、戦術、クラブのあり方全部含めて、常に自分の目で見て、自分の意見を持って物事を考える癖をつけることですね。 ――自分の頭で考えること。 中村守孝社長:自分の頭で考えて自分で動く、ということを卓球の中から身につけていただければいいんじゃないでしょうか。 他人の頭で考えたことを倒れるまでやらされ、というような、かつての一部の運動部にあった意味不明な理不尽さは、人間をおかしくさせてしまうと思いますね。最近の日本のチームスポーツを海外出身の監督やコーチがオリンピックに導く様子を見ていてもそう思います。