「空のF1」レッドブルエアレース打ち切りのなぜ?
最高速度が時速350キロを超え「空のF1」として人気を博してきたレッドブルエアレースが今シーズン限りで終焉となることが29日、明らかになった。レッドブルエアレースが公式HP上で「2019年を最後に以降レースを継続しない」とアナウンスしたもの。今季も当初8大会が予定されていたが、10月19、20日の米国・インディアナポリス大会などが中止となり、6月のロシア・カザン大会、7月のハンガリー・バラトン湖大会と、9月7、8日に日本で行われる千葉・幕張大会の3大会だけに縮小され、この千葉・幕張大会が最後の大会となる。 2003年にスタートしたレッドブルエアレースは、世界の精鋭パイロットが、独自にチューンナップしたマシンで、パイロンと呼ばれる障害物をアクロバティックにクリアしながらタイムを競う競技で全世界を転戦しトータルの獲得ポイントで年間チャンピオンが争われる。 一時大会の中断もあったが、これまで90レース以上が全世界で開催され、ファンの支持も得て軌道に乗っているように思われていた。次世代のパイロット育成のレースが“前座”として開催されるケースもあった。 日本からも室屋義秀(46)が参戦しており2016年の千葉・幕張大会で優勝、翌年は千葉・幕張大会で連覇を果たし、アジア人として初の年間総合チャンピオンに輝き、福島の県民栄誉賞も授与されている。今季も2シーズンぶりの年間総合チャンピオンに向けて開幕戦となる2月のアブダビ大会で優勝、最高のスタートを切っていた。 だが、同公式発表によると、「レッドブルエアレースは最高品質のスポーツエンターテイメントを提供してきましたが、世界中で行われている他のレッドブルイベントのように外部の関心を引きつけることができませんでした」という実情があった。 日本では、2015年の千葉・幕張大会が最初の開催となり、十数万人規模の観客を動員して大成功、徐々に動員数は下降してはいたが、行政の協力も得て4年連続で大会運営はうまくいっていた。だが、日本の千葉・幕張大会以外の国では、集客やスポンサー獲得に苦しみ、数年前からは、経営母体がレッドブルを離れて「レッドブルエアレース」として独立、そこから独立採算の運営をすることになり、一層、厳しい現実を突きつけられていたという。モータースポーツの宿命だが、運営経費も莫大にかかり、それに見合う収益が伴わなかったと見られる。またF1のような世界的規模でのスタンダードな広がりも運営側が期待したほど見られなかったようだ。 まだ千葉・幕張大会のレッドブルエアレース実行委員会への事情説明などが行われていないため、日本での公式アナウンスは行われていないが、すでに国内外のファンの間からは多くの失望の声が聞かれ、「どこかが事業を引き継ぎエアレースを継続することはできないだろうか」という声も上がっている。 大きな主戦場を今季限りで失うことになる室屋。彼自身は、地元の福島で数々の航空機関連のプロジェクトを立ち上げているが、9月の千葉・幕張大会で有終の美を飾ると同時に、今後の動向についても注目が集まる。 レッドブルエアレースの公式HPは、「レッドブルは、これまでのレースを楽しく思い出深いものにしてくれたパイロット、チーム、パートナー、開催都市、そしてレッドブルのスタッフに感謝します」という言葉で締めくくられている。