膀胱全摘出「ロボット手術」を受けた正直な感想 4本アームの「ダ・ヴィンチ」はSF世界から来たようだった
翌朝、窮屈さの中で起床した。ベッドの上でさまざまな管にしばられ、身動きが取れない。これほどの拘束状態におかれるとは思わなかった。傷口の痛みはほとんど感じない。むしろ体を自由に動かせないことのほうがツライ。 昼過ぎ、看護師さんがやってきて恐怖の言葉を発した。 「さあ、ベッドの上に起き上がって縁に腰かけるリハビリをしましょう」 えーっ、手術翌日にリハビリかい。いやはや、なんとも厳しい世界だ。最近はそれが主流なのか。おそるおそる体を曲げ、何とか起き上がる。意外なことに、痛みは特にない。術後1日目からリハビリを行うことで、回復が早まるそうだ。嫌がらずにやっていこう。
午後、ストレッチャーに乗せられて一般病棟に戻る。今度は窓側の部屋を用意してくれた。ありがたい。ベッドに移ったとき、看護師さんが「おかえりなさい」と優しい笑顔で声を掛けてくれた。まさに天使である。このきらきらした特上の笑顔は生涯忘れることはないだろう。 2時過ぎに家族が面会に来てくれ、昨日の手術直後の様子を教えてくれた。 「先生が摘出した膀胱を見せてくれたわよ。これから病理検査に出すんですって。写真撮っておいたけど見る?」
とてもじゃないが、今はそんな気分じゃないので断った。 「退院したら見るよ」 この日から水は口に含んでいいとのこと。吸い飲みを用意してもらい、少しずつ口に含む。ありがたい。水がこんなに貴重だとは。食事にありつけたのは術後2日たった31日の夜からだった。五分がゆにミートクロワッサン、野菜スープ、カボチャプリンといったメニュー。久しぶりに食事に大感激だ。 暦は11月。秋は確実に深まっていた。 ■ロボット手術時の主な合併症について
手術中においては、多量の出血があった場合に輸血を行う場合がある。予想以上の出血があった場合には開腹手術に移行するケースも。3~4%程度の頻度で直腸を損傷することがある。出血や癒着、その他の合併症により安全性が確保できない場合は、開腹手術へと変更することがある(0~2.3%)。 手術後、中程度の発熱を生じることがある。いわゆる術後の反応熱である。抗生剤で対応するが、あくまで創部感染などに対する予防的な投与である。
山田 稔 :ジャーナリスト