膀胱全摘出「ロボット手術」を受けた正直な感想 4本アームの「ダ・ヴィンチ」はSF世界から来たようだった
■“予期しない事態”への不安も 「予期しない」には、こんな記述があった。 <患者さんの治療経過中には、事前には予期できない、あるいは予期することが極めて困難な症状が発生したり、病状の変化がみられることが、まれではありますが起こり得ます> <患者さんの身体状況に直接の影響を与える医療行為を行った際には、身体が予測のつかない反応を示すことがあります。これは、人間の身体の複雑さや一人一人の身体状況が異なることが原因と考えられ、これこそが医療の持つ不確実性の大きな要因であるといえます>
手術前に「不確実性」への言及を目にするとは。それまで楽観的だったのが一転して、一抹の不安が脳裏をかすめる。 「全身麻酔だしな。そのまま意識が戻らないことだってあり得るよな」 「膀胱を摘出する際に直腸を傷つけてしまう可能性だってあるよな」 考え出したらきりがない。 いつまでもネガティブに考えていても仕方がないので、スマホでショパンやラフマニノフのピアノ曲を聞いて心を落ち着かせる。そういえば前日の夕方から絶食だった。18時過ぎになると病室の他の患者たちに夕食が運ばれてくる。こういう日に限っていい匂いが立ち込める。
10月29日。いよいよ手術当日を迎えた。朝いちばんに髭を剃って手術着に着替える。家族がやってきて、励ましの言葉をかけてくれる。さあ、時間だ。ストレッチャーに移されて手術室に向かう。手術室の前で家族と別れ、いざ部屋の中へ。 目の当たりにしたダ・ヴィンチは意外と大きかった。SFの世界みたいだ。手術の前に麻酔をかけられる。まずは局所麻酔だ。「体をエビのように丸めてそのままにしてください」との指示に従い、窮屈な姿勢を維持。看護師さんが押さえつけてくれている。
腰のあたりに細い麻酔の針が刺さっていく。次に姿勢を変えて手術台の上に移動する。まさにまな板の上のコイだ。酸素吸入器が口に付けられ、全身麻酔の準備が始まった。記憶はここまでで途切れた……。 数時間後。目が覚めたら家族が脇にいて声援してくれていた。集中治療室に移動してベッドに横たわっているようだ。少しずつ意識が鮮明になっていく。家族と二言三言会話を交わしたと思うが、再び睡魔が襲ってきて夢の世界へ。 ■起床したときの感覚は?