【スワンS回顧】タフな消耗戦で力示したダノンマッキンリー 欧州血統由来の底力、モーリスの血がみせるスケール感
マイルならオフトレイル
2着オフトレイルは最後方から直線に賭けた。前走は毎日王冠で、出世したのも1800mだっただけに、速い流れの追走は厳しい。武豊騎手もこれを踏まえ、腹をくくって乗った。上がり600m33.1は次位に0.5差。明らかに脚色で上回った。 得意距離がつかめないが、父ファーは10ハロンとマイルでGⅠ2勝をあげ、産駒もマイルGⅠを制したフォンテーン、キングオブチェンジ、今年のムーランドロンシャン賞を勝ったトリバリストとマイルを得意としている。欧州の道悪での活躍も目立ち、マイルのなかでもスピード勝負になると分が悪そうだが、今回のように後半が消耗戦になると台頭する。オフトレイルも1800m重賞を勝ち、1400m重賞2着という結果を踏まえると、マイルがいいだろう。父、母どちらにも流れるヌレイエフの血がマイルの底力勝負で花を開かせるだろう。 3着トゥラヴェスーラは展開がはまったにせよ、3歳重賞ウイナー3頭に割って入ったのは立派だ。この世代が生まれた2021年春、すでにオープンを勝ち、京王杯SC2着と同じ舞台で活躍していた。馬の世代感覚でいえば、ダノンマッキンリーの父モーリス(13歳)に近い。長い休養を挟みながら9歳でGⅡ3着は、負けたのは事実だが、もっとたたえられるべきだ。 4着はノーブルロジャー。前目にいた馬では唯一残っており、見直しが必要だ。毎日杯2着以降は冴えないレースが多く、オープン特別でも結果を残せなかったが、やはりこの馬は京都巧者。米子Sの0.3差4着も京都だから、現状は坂の下りを利用し、自然に勢いをつけられる形がベストだろう。この手のタイプは成長していけば、ほかの競馬場でも走ってくる。そこを見極めて、京都以外で好走するタイミングを狙えば、いい配当をとれるかもしれない。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳