【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】角田選手は、レッドブル昇格のチャンスをつかんでほしい!
■好対照の結果に終わったVCARB 上位勢以上に熾烈な戦いを続けているのが、ビザ・キャッシュアップRB(VCARB)、ハース、ウイリアムズなどによる中団グループです。アメリカGPでの角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手はタイヤ戦略がうまく機能せず、苦しいレースになってしまいました。 柔らかめのミディアムタイヤでスタートした角田選手は、序盤は中団グループのトップを走行していましたが、硬めのハードタイヤに交換したあとのペースがよくなかった。それは角田選手だけではありません。上位からスタートした多くのドライバーがミディアムからハードというタイヤ戦略を採りましたが、多くのドライバーがレース後半に使用したハードタイヤに苦労していました。 逆にハードタイヤでスタートしたドライバーが大きく順位を上げることになりました。今回からVCARBのステアリングを握ることになったリアム・ローソン選手がそのひとりです。後方の19番手からスタートしたローソン選手はハードタイヤで30周以上も周回しましたが、ペースがほとんど落ちなかった。後半にミディアムに交換した後もペースを維持して9位でフィニッシュ。約1年振りの復帰戦で見事にポイントを獲得しました。 ローソン選手と同じ作戦を採ったメルセデスのジョージ・ラッセル選手はピットスタートから6位、ウイリアムズのフランコ・コラピント選手も後方の15番手からスタートして10位にそれぞれ入賞していたことからも、アメリカでは硬めのハードでスタートしたローソン選手の作戦のほうが"当たり"だったと思います。
■ハースで日本人ドライバーがいつか走ってほしい 角田選手は苦しい展開だったにもかかわらず、レース終盤までアルピーヌのピエール・ガスリー選手とトップ10争いを繰り広げていたのですが、痛恨のスピンで順位を大きく落とします。ポイントを取れなかっただけでなく、対チームメイトの戦いにも敗れたのは痛かった。 さらにコンストラクターズ・ランキングで6位の座を争うハースにも逆転を許してしまいました。アメリカGPの週末、地元のハースは好調で、スプリントレースでダブル入賞を飾り、決勝でもニコ・ヒュルケンベルグ選手が8位でフィニッシュ。ハースは合計7点を稼ぎ、VCARBを2点差で逆転します。 これからの角田選手にはチームメイトに勝って、VCARBがコンストラクターズ・ランキング6位の座を取り戻すような走りを期待しています。それができればレッドブル昇格につながっていくと思います。とにかく残り5戦、角田選手には結果を残してもらって、レッドブルのシートをつかんでほしい。 アメリカGP前にトヨタとの業務提携を発表したハースは、小松礼雄(こまつ・あやお)さんが代表に就任してから非常に調子がいい。それ自体はすごくうれしいのですが、今、ハースの直接的なライバルになっているのが角田選手の所属するVCARBです。角田選手を応援している身としては本当に困ったなあ......と感じています。 ハースはこれからトヨタとパートナーシップを組み、ドライバー育成や車両開発の分野などで協力していくといいます。何年後になるのかわかりませんが、ハースで日本人の若いドライバーが乗ってくれたらいいなと、そんな勝手な夢を見ています。 ☆取材こぼれ話☆ F1を主催する国際自動車連盟のベン・スレイエム会長は、F1ドライバーたちにレース中の無線で"Fワード"などの汚い言葉を使わないように要請したことに対しドライバーが反発し、大きな議論を呼んでいる。 「英語での表現についてはよくわかりませんが、スポーツだけでなく、エンターテイメントの世界でも使ってはいけない言葉の規制が厳しくなっています。でもレース中はアドレナリンが出ているドライバーに対して、無線でFワードと使うなというのは難しいですよね。例えば、僕たちの舞台でも袖で早替えをしている際は時間との戦いですので、スムーズに行かなかったり、水が飲めなかったりしたら、思わずちょっとした汚い言葉が出ます。それは表に出ないですが、現代のF1はレースの裏側を表に見せるようにして、それがエンターテインメントのひとつになっています。時々、ピー音だらけの無線がありますが、スポーツに関しては汚い言葉の部分は放送しなければいいと思います」 スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/Karaln ヘア&メイク/大平真輝) 構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(対談) 写真/桜井淳雄 Lrwen Song