鉾復活で記念誌発行 伝統の春日神社秋祭り 「歴史再認識できた」/兵庫・丹波篠山市
兵庫県丹波篠山市の河原町通り無電柱化完成記念・鉾復活実行委員会が、「河原町通り鉾復活プロジェクト記念誌」(A5サイズ42ページ)を発行した。例年、篠山春日神社秋祭りでは9基の鉾山が城下を巡行する。2021年に完成した河原町通りの無電柱化工事をきっかけに、23年春、うち2基の鉾山の屋根の上に鉾を掲げての巡行を約110年ぶりに復活させた。記念誌には、復活までの経緯や巡行の様子、全9基の鉾立てでの巡行目標などを盛り込んでいる。
1700年代半ばには鉾山全9基が鉾を掲げて巡行していたが、1910年に河原町通りに電灯が引かれ、鉾が電線の障害となったため、以降、鉾のない状態での巡行が続いた。 2004年、河原町通り周辺が国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。17年には、春日神社祭礼が市の無形民俗文化財に指定される流れで無電柱化が実現。鉾復活の機運が高まり、21年10月、上、下河原町、小川町の3自治会や、地域、祭りの団体で構成する同実行委員会が設立された。以降、文化財的な価値を維持した修復、資金集めなど、さまざまな課題を解決しながら、三笠山と鳳凰山の鉾が復活した。
記念誌には、春日神社の創建(876年)に始まり、秋祭りの開始(1654年)、各鉾山の寄進、昨秋の巡行までの歴史を掲載している。 篠山まちなみ保存会会長で、同実行委員会副委員長の川端登さんが「(出身者から)子どもの頃のお祭りの様子を懐かしく思い出し、多くのメッセージと共に資金を積み上げていただき、こういった思いを絶対実現させなければならない」などと「百十年の念い」に寄せている。 また、篠山春日神社秋祭保存会長の藤本善一さんは、21年11月に同保存会を設立したことに触れ、「今後、県の文化財指定を目指すとともに、時代に沿った発展を目指したい」と寄稿している。 同市出身で灘中・高校教諭の久下正史さんは、京都の祇園祭や丹波篠山の他の祭りとの関係などをつづっているほか、鉾の修復方法、各鉾と太鼓みこしで着用する法被のイラスト、昨年の巡行時の子どもたちの写真とメッセージなどを掲載している。 同実行委員長の川内隆志さんは「記念誌の完成で鉾の歴史を再確認できた。全9基復活の出発点にしたい」とその意義を話し、「河原町通り以外の城下町の無電柱化を市に要望しており、他の7基の鉾復活が目標。鉾の復活とともに人員の確保が課題だが、祭りを次世代につないでいきたい」と話している。 1000部を発行。約700部を地元住民、関係者に配布済み。1部500円。