名古屋を「とてつもない揺れ」が襲う…「南海トラフ巨大地震」発生時の「愛知県の凄すぎる被害想定」
中京圏を、揺れ幅6メートル以上の長周期地震動が襲う
そして、名古屋市は震度6強~震度7の大揺れと共に、一部地域の超高層ビルでは最大揺れ幅6m以上の長周期地震動が想定されている。前述したように、国は柔らかな堆積層に立地する三大都市圏(東京、名古屋、大阪)では、南海トラフ巨大地震発生時には長周期地震動が励起されやすく、揺れの継続時間が長くなりやすいとしている。さらに、沿岸部では揺れ幅2~4mという長周期地震動が襲い、さらに中京圏や近畿圏の一部で超高層建物の上層階では揺れ幅6m以上の揺れになると推計している。揺れ幅4m~6m以上の揺れを想像してみてほしい。身の回りにある什器、備品が吹っ飛び、家具類が大きく移動し、勢いよく倒れるものがあり、人が飛ばされるほどの危険な揺れである。 東日本大震災の時、震源から600キロメートル以上離れた名古屋市は最大震度3(北区萩野通)~震度4(港区春田野)だった。ところが、名古屋ルーセントタワー(高さ180.2m、40階建て)の32階で仕事をしていた人は、「最初に結構大きな揺れが来た」「船に乗っているようなゆっくりとした揺れが何分か続いて、船酔い状態になった社員も何人かいた」「横揺れがすごくて、長く大きく揺れていた印象がある」だったという。 超高層建物のオフィスやタワーマンションの上層階居住者は、南海トラフ巨大地震の長周期地震動に備え、今のうちに家具・什器・備品の複数個所の徹底固定と合わせ、窓やガラスから離れた安全な場所に、姿勢を低くしてすぐに両手でつかめるように、床や壁に堅固な「飛ばされ防止手すり」の設置が急務である。00年以前に建てられたビルの長周期震動対策や高層マンションやオフィスの長周期地震対策の詳細説明は、前述の2-(4)項参照。 さらに名古屋周辺で懸念されるのが長周期地震動によるスロッシング(揺動)で発生する石油コンビナート火災である。自動車、航空機、宇宙産業など、東海・中京地区は製品出荷額が日本最大の生産出荷額を誇る一大工業地帯である。とくに伊勢湾沿岸は四日市市を始め、多数の石油コンビナートなどを有する一大石油化学工業集積地である。その多くの施設が埋め立て地、沖積低地などの軟弱地盤に立地している。 こうした湾岸部を長周期震動が襲えば、1964年新潟地震の時のように液状化だけでなく、石油タンクのスロッシング、浮屋根損壊、原油漏洩、大規模火災などを引き起こす可能性がある。新潟地震の時は12日間燃え続け143基の石油タンクが焼失し、日本の災害史上最悪の石油コンビナート災害となったが、南海トラフ巨大地震が発生すれば、湾岸部で揺れ幅4mの長周期地震動が襲うと想定されている。となれば、過去の石油コンビナート災害を上回る恐れもある。 万一伊勢湾内で石油類の流失や火災が発生すれば、長期間の港湾閉鎖も免れない。これは国家の損失であり、未曾有の国難となる。日本一の工業地帯は、今こそ大揺れ、大津波、長周期地震動に備え官民一体となっての具体的対策の実施が求められる。そして、その対策が適正に実施されているかを、第三者による防災パトロールが必要となる。長周期地震動によって発生する結果事象や対策は、前述の<じつは「南海トラフ巨大地震」では「東京」も大きな被害…その具体的な想定の数値>以降の記事を参照してほしい。 さらに関連記事<「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う「衝撃的な事態」>もぜひご覧ください。
山村 武彦(防災システム研究所 所長・防災・危機管理アドバイザー)