阪神・淡路の活断層に「割れ残り」 兵庫県南部、30年以内にM7.9の可能性「やや高い」 政府の地震本部
1995年1月にマグニチュード(M)7・3の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を引き起こした活断層帯に「割れ残り」があり、今後30年以内にM7・9程度の大地震を起こす可能性が「やや高い」と評価されていることが、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)などへの取材で分かった。神戸・阪神間や淡路島などが再び震度6~7の揺れに見舞われる恐れがあり、備えが急がれる。(上田勇紀) 【図表】兵庫県とその周辺にある主な活断層帯の長期評価 30年前に最大震度7の揺れを起こしたのは「六甲・淡路島断層帯」。主部は大阪府箕面市から淡路島北部へ続く「六甲山地南縁-淡路島東岸区間」(長さ約71キロ)と、「淡路島西岸区間」(同約23キロ)からなる。 地震本部によると、たまったエネルギーを阪神・淡路で大きく解放したのは、このうち淡路島西岸区間。北淡町(現・淡路市)の地表には西岸区間の一部である野島断層が現れ、地殻変動のすさまじさを示した。 一方、六甲山地南縁-淡路島東岸区間の動きは西岸区間に比べて小さく、エネルギー解放は71キロにわたる全域には及んでいないという。地震本部は「阪神・淡路での活動は、この区間で起こりうる規模の地震より一回り小さかった」としている。 六甲山地南縁-淡路島東岸区間の最新活動は16世紀と推定され、割れ残りの部分は400年以上活動していないという。そのため、今後30年間の地震発生確率を表す地震本部の長期評価は今年1月時点で「やや高い」に相当する最大1%、M7・9と想定された。確率は数値としては低いが、危険度では2番目に高い「Aランク」に分類されている。 同じAランクの活断層帯が引き起こした地震としては、2016年の熊本地震がある。事前の評価では、発生確率「ほぼ0~0・9%」だった布田川(ふたがわ)断層帯の一部区間が動き、最大震度7の揺れを起こした。 活断層の密集地帯である近畿地方では、上町断層帯(M7・5)が危険度の最も高いSランクの評価。Aランクは六甲・淡路島断層帯以外にも多くある。 阪神・淡路の発生によってしばらく兵庫県南部に大地震は来ない、との見方に専門家は警鐘を鳴らす。神戸地方気象台の伊藤嘉記・南海トラフ地震防災官は「六甲山地南縁-淡路島東岸区間は71キロと長く、すべて動くと地震の規模が大きくなる。都市直下のため、揺れそのものは南海トラフ巨大地震よりも大きくなる可能性がある」と指摘。未知の活断層もあるとみられることから、耐震化や家具の固定といった対策を呼びかけている。 【長期評価】 主な活断層で起こる地震や南海トラフ巨大地震などの海溝型地震を対象に、地震の規模や一定期間内に地震が発生する確率を予測したもの。阪神・淡路大震災を機に発足した政府の地震調査研究推進本部が公表、更新する。30年以内の地震発生確率は3%以上が「Sランク」、0・1~3%未満が「Aランク」、0・1%未満が「Zランク」。