<119年越しの夢・’24センバツ耐久>軌跡/中 初の大舞台でも躍進 対全国の強豪を見据えて /和歌山
主将の赤山侑斗(2年)が抽選で引き当てた県2次予選1回戦の相手は、新人戦準々決勝で敗れ涙をのんだ日高だった。「絶対に日高を倒して、近畿大会に出よう」。捕手の川合昌翔(同)が三回に適時打を放ち先制し、エースの冷水孝輔(同)が9奪三振で完封勝利。得点圏に走者を背負う場面もあったが、ピンチを切り抜ける強さがあってこそ、果たせたリベンジだった。まぎれもなく、この試合が新チームの転機となった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「試合を作れるエースにならないといけない」。冷水は夏以降、さらに制球力を磨くため、毎日計3キロのランニングや下半身のトレーニングにいそしんでいた。投球フォームもワインドアップからセットポジションに変え、ぴったりとはまる感覚があったという。日高戦の直後には「自分たちは甲子園に行ける力がある」とまっすぐな瞳で話し、自信がみなぎっていた。 準決勝の和歌山東戦では初回に5番・白井颯悟(1年)が3点本塁打を放つなど試合を優位に運び、冷水が2試合連続の完封勝利をおさめ、近畿地区大会出場を決めた。10月8日の決勝では、田辺に5―3で勝利。九回は最後の打者を遊ゴロで打ち取り、田辺の強打者、4番・山本陣世(2年)に回さなかった。「少しは成長できたかもしれない」と手応えを示した冷水。耐えて粘ってつかんだ初優勝だった。 「初めての大舞台」。井原正善監督(39)は近畿地区大会をこう表現していた。10月28日の初戦まで時間が空いたため、チームは22日の試合を大阪シティ信用金庫スタジアム(大阪市此花区)で見学。風の強さや球場の雰囲気を確かめ、6日後に控えた試合への心構えを持った。 1回戦は社(兵庫)と対戦し、八回に4番・岡川翔建(2年)が逆転の3点適時二塁打を放ち勝利した。勢いを保ったまま迎えた翌日の準々決勝では須磨翔風(兵庫)を4―1で降し、4強入りを果たした。この試合は10安打を浴びながらも3併殺を奪うなど要所を締め、効率的に加点して勝利をつかんだ。センバツ出場の重要な参考資料となる近畿地区大会。新チーム結成当初から掲げていた「近畿大会で1勝」の目標をクリアしただけではなく、期待以上の「2勝」を成し遂げた瞬間だった。 準決勝の相手は京都外大西。体調不良とインフルエンザで3人を欠き、いつもより少ない16人で挑んだ。1点を追う九回に1死二塁のチャンスを作ったが、あと1本が出なかった。「失点した場面がエラーからだったので、悔いが残ります。もう一つ二つ、守備がしっかりしないといけない」と話した井原監督。一般枠でのセンバツ出場が見えてきたチームに、全国の強豪と戦う自覚が芽生え始めた。【安西李姫】