湯崎英彦・広島県知事に聞く(全文3完)日本の新モデル・広島県で実現したい
地域が強くなることで国が強くなる
行政としても、分権を進めて、東北地方でやっていることと、中国地方でやっていることは全然別のことですと。全く違うとまたいろいろ困りますけれども、かなりの自主性、われわれは分権が必要だと言っているんですけれども、権限を与えていろいろなことができるようにするということが重要かなと。 やはり強い国というのを見ると、アメリカもそうですし、ヨーロッパもどこか一つの体制の国というよりは、EUとして、今ちょっと揺らいでいますが、EU全体として見ると非常に多様ですよね。アメリカなんかも非常に多様ですよね。そういう多様性が日本にも必要だと思うんですね。それをできる限りつくっていく。それは国のあり方というか、国の構造として非常に重要な。 今、地方創生もやっていますが、どうしても東京で施策を考えていると、地方が弱っているから地方を復活させないといけないみたいな。いやいや、そういうことじゃないですよね。確かに、地方は弱っていますけれども、その地方を救うために何かやるということではない。国の競争力とか国自体を強くするために、地域を強くする。国と地方、地方のない国というのはないわけですよ。 よく国と言いながら、実は東京を指していたり。それは違う。東京は一地方なんですよね。一地方の東京だけが強くて、あとの地方は弱っているというのは、国全体としては弱っているということなんですよね。だから、地域が強くなるということが、国が強くなるということだし、それによって多様性を生んで、さらに強くなっていくということに取り組んでほしいな、と思いますね。
広域連携は重要な取り組み スイスぐらいの単位が非常にいい
── 例えば、「せとうちDMO」(せとうち観光推進機構)なども、県に縛られず、イノベーションともとれますし、広域ともとれます。こういった取り組みは、県だけではない力もあるかと思うのですが、発展性や、これからの連携をどう捉え、描いていますか。 それは、今申し上げた地域が独自性を出していくということの一つの例ですけれども、地域にいろいろなことを自主的に任せるだとか、これは分権ですが、あるいはさまざまな施策を実行していくというときに、あまりにも単位が小さいと、これまた力が分散されますし、制度的な面で言うと、昔の藩みたいに300もあって、それぞれが通貨を出していたら混乱しますよね。ですから、幾つかの固まりで集まって、その力を出していくということは、非常に重要だと思いますし、例えばスイスとか、非常に競争力ありますよね。だから、それぐらいの単位が、非常にいいのではないか、と思いますね。(※スイス人口824万人、国連人口統計年鑑2015年版) 今の「せとうちDMO」は、瀬戸内海沿岸の7県で協力をして観光の振興を図っていこうという取り組みで、これは一県一県だと訴求力がどうしても弱い。瀬戸内というくくりでまとめれば、一つは、この瀬戸内海というもの自体が非常に大きな資産でありますし、これは景観とかを考えても非常に豊かなものがある。なおかつ、それぞれの地域なり、いろいろな歴史的なものとか文化的なもの、あるいは温泉みたいなもの、これを統合してアピールすることができるので、そうすると魅力がさらに高まります。 それによって観光客に来ていただいて、広いですから、宿泊を伴って観光していただける、周遊していただけるというところが見えてくるわけですね。そのために力を合わせてやろうということですが、その他も含めて、一定の大きなまとまりの中で協力をしていくというのは、人材的にも、財政的にも、基盤が安定してきますし、さまざまな知恵が集まってくるということもあります。それから、人材が集まってくるというのもありますので、非常にプラスですよね。 それから、コスト面で見ても、いろいろな重複を取り除いていくといったことで、コスト削減効果も高いということを目指していけますので、そういう意味で広域の連携というのは、非常に重要な取り組みになると思いますし、いろいろなことで発展できると思います。 ── 今の枠組みの中では難しい部分もあるかと思いますが、発展できる可能性を感じているということですね。 そうですね。具体的に、例えばドクターヘリの運用だとか、これは中国地方で連携をして進めていますし、保育に関しても、岡山県、あるいは山口県と連携して、例えば病児保育のような、需要が安定しないようなものについては相互利用を図ることによって安定的な運用ができるとか。あるいは家畜の防疫病対策ですね。今だったら鳥インフルとかありますけれども、そういうものを協力して進めるとか、いろいろな具体的なことは進んでいますね。