湯崎英彦・広島県知事に聞く(全文3完)日本の新モデル・広島県で実現したい
東京集中で失われる多様性 企業・人を分散させる構造をつくる必要
── 現状では、東京への一極集中が起こりやすいと思います。知事として、広島だからできること、国に対して発信できること、働き方改革という意味でも、何か提言できる部分や気づかれたところは。例えば地方がリードしていることや東京一極集中に対して思うことはありますか。 まさにワーク・ライフ・バランスみたいなところで言えば、東京だと、条件としてどうしても通勤時間が長いということがありますし、広島の場合には帰宅時間が1時間ぐらい早いんですね。ですから、そういうワーク・ライフ・バランスを実現していくというか、それが人間としても、これから社会に経済的に求められるのがイノベーションとかクリエーティブなことですよね。 どんどん新しい価値をつくっていくということが、社会全体として求められているので、そのためには仕事に視野狭窄になって取り組むというよりは、いろいろなことをやる中で視野を広げていく、いろいろな経験をする。それがそういう新しいものをつくっていく力につながっていくと思いますので。そういうことを国全体としてもっと進めていく必要があると思いますし、そのためには、東京でそれを実現するというよりは、地域に人を分散していく、会社も分散していくと。 われわれから見ると、東京に企業が集中するというのは、一見効率的に見えますけれども、実際、東京の生産性は高いですが、これはかなり統計上の問題というのもあるんじゃないかと思っていまして。これは高名な経済学の先生方と話をしているのですが、それはありますよね、とおっしゃっています。 一つは、みんな東京にいると多様性が失われます。みんな同じ生活空間を共有して、いろいろなサービスとかそういうのも共有して、ニュースも同じものを見ていて、となると多様性が失われていきますよね。みんな同じ頭になってしまう。同じ流行を追っていく、同じ考えを持っていく、それはクリエーティビティを失わせているわけです。 イノベーションというのは、さまざまな知が合わさって、新しい知を生んでいくというものなので。これは空間経済という世界に入りますけれども、空間経済学上は、あまりにも集中しちゃうとイノベーションを生む力を失っていくと思うんですね。ですから、地域・地域で、それぞれちょっと離れて勝手にいろいろなことを考えていると、それが合わさって、時に交流して新しい知を生んでいく、そういうことを構造的につくっていかなきゃいけないと思うんですよ。そのためにも企業とか人の分散、つまり多様性を国内でつくっていく、できるだけ多様化を国内で図っていく。