黒岩祐治・神奈川県知事に聞く(全文2)依存では超高齢社会乗り越えられない
健康と病気の間のグラデーションにある「未病」改善の取り組み
一番大事なことは何かといったらば、それは病気にならなくする。簡単に言えばそうです。病気にならなくすれば一番いいわけですね。その中で、我々が提案した考え方というのが「未病」という考え方ですね。
それは、ちょっとこちらを見ていただきますと、大体こういうふうに、健康か病気かと物事を考えがちですね。でも実際、自分で考えてみたときに、全くの健康があって、真っ赤な病気があるという状況はないですよね。何となく具合が悪いとか、きょうは何となく調子がいいとか。実はそれは未病だと、こういう考え方です[イメージ2]。 健康と病気の間はグラデーションで変化するということです。これが未病。少しでも白い方(健康)に、白い方にもっていこうとする努力を日常的に続けることが大事だということですね。そのために、食そして運動、社会参加、こういったものがとても重要な役割を果たすだろう。つまり食のあり方によって未病を改善する、そして日常的な運動習慣によって未病を改善する。
それからもう一つの社会参加。これは非常に大事なんですけれども、実は千葉県の柏市で、高齢者を対象にしたある種の研究が行われたんですけれども、ご老人がぐっと具合が悪くなってくるというのはどういうときか、といったらば、「フレイル(frail)」と。フレイルというのは足腰が虚弱になってくる。そうすると外へ行かなくなるのですね。外へ行かなくなって家に閉じこもりきりになると、ぐっと具合が悪くなってくるのですね。 やっぱり外へ出ていくということが大事。外へ出ていくというのも、ただ単に外を散歩していればいいということじゃなくて、社会とかかわっているということが大事。特に社会とただ単にかかわるだけじゃなくて、社会の役に立っている、そういう感覚というのは非常に大事だと。社会参加ですね。これをやっていると、ご老人がどんと悪くなっていかないということなんです。 だから、社会参加というのも未病を改善するために非常に重要だということで、食、運動、社会参加をみんなでやっていくことによって、日常的に未病を改善しながら、健康な時代を長くしていこう、健康寿命を延ばしていこうということを全県的に進めているんですね。 これを、神奈川の場合には、最先端の技術。医療と技術をドッキングさせていこうと。最先端とは、再生細胞医療とか、ロボット技術とか、それから高度な医療の情報化。 こういったものによって、ビッグデータを処理しながら、日常的な生活の中で、どんなデータがとれるかということを刻々と記録していきながら、自分でグラデーションのどこにいるかを見える化すると。わかったらば、自分でそれをコントロールしていこうという力が働きますから、そして自分で自分の健康を取り戻そうとみんなが努力することによって、この超高齢社会も明るく乗り越えていけるんじゃないかなということで、国家戦略特区を使って「ヘルスケア・ニューフロンティア」という取り組みの中で進めているところなんですよね。