黒岩祐治・神奈川県知事に聞く(全文2)依存では超高齢社会乗り越えられない
人生100歳までが普通 社会システムの変革につながる
── 未病の取り組みは、いろいろな広がりを見せています。健康寿命の延び、社会参加というと、知事が提案する「人生100歳時代の設計図」とつながっていくようです。 未病を改善する先に、どういうことが展開するのか、ということですね。これは、もう既に単に、医療の延長にある話じゃなくなってくるのです。大きく言うと、社会のシステムそのものの変革につながってくると、こういうことですね。というのは、皆さん未病を改善して、そして健康な時代を、長くしましょうということを目指していますね。そうすると、健康なご老人がたくさん増えてくるということです。とってもすばらしいことだと思います。 人生は100歳まで生きるということがもう普通になってきます。というのは、100歳以上の方の数ですけれども、1963年には全国で153人だったんです。これが今は、6万6000人を超えています。2050年になると70万人に達する。70万人に達した2050年、人口で割り算すると142人に1人が100歳以上と、こういう時代がくるんですね[グラフ4]。 そうすると、100歳を超えたような方がたくさんいらっしゃると。皆さん元気、すばらしいですよ。ところが、そういう皆さんが100歳まで生きるということを前提とした社会の仕組みになっていますか、ということですね。そういう目で見てみると、要するに、今の人生の設計図というのは、若いときに勉強して、そして仕事をする。60歳は大体定年だと。60歳を終わったら、あとちょっとは延長で働けても、あとは、老後という発想ですね。
ところが60歳定年でも、100歳まで元気だったら40年間あるんですね。ここから折り返したら、もう1回社会人生活を送れるぐらいの長さがもう1個あるということです。それだけの長い時間を老後でのんびり暮らしてくださいといったって、皆さん元気ですから、能力がどんどんありますから、のんびりしてって、なかなかできないですよね。そうすれば、逆に言うと、この人たちの力をどう使っていくかということが、大きな大きな課題になってきますね[イメージ3]。 ですから、社会全体のそういった仕組みも大事だし、一人一人の生き方、自分の人生の設計図をどう描いていくのかということ、つまり現役世代で働きながらも、また、違った人生の展開というものを現役世代から用意するなんていうことも必要になってくる時代なのかな、と。例えば、学び直し。ある程度の年齢からでも、さらにもう1回学び直すことによって、また新たなキャリアをスタートさせることができる。 つまり考えてみれば、60歳から新たなことを始めても、40年もあれば、世界の巨匠になるかもしれないですよね。それぐらい夢をもってチャレンジしていきたい、いけるようなそんな仕組みづくり。社会としても、県としても応援していくことがたくさんあるだろうと。 例えば、ベンチャー。ベンチャーというのも、これは若い人が挑戦してベンチャーを始めるという、これはよく皆さんイメージしますけれども、シルバーベンチャーというのもある。つまりある程度経験を経て、いろいろな専門知識も得た、その上で会社を飛び出して、そこから自分で新たなベンチャーをスタートさせるといったこと。 こういったことをやりたいというご老人も、ご老人だけじゃないですね、現役世代もたくさんいらっしゃるのだけれども、そういう人に対して、我々は支援する場を提供したり、機会を提供したり、そんなことをしているところなんですね。 結果的にそうやって我々が目指すことはどういうことか、といったらば、それで、皆さんが100歳になっても輝き続けられる。みんながスマイルという笑顔あふれる。そういう明るい超高齢社会を目指していきましょう、ということが大事だなと思って進めているのです。