1960年代のスポーツカー性能テスト 辛口の英国人が選んだ「最高の1台」とは? 歴史アーカイブ
当時最新のスポーツカーを限界までテスト
AUTOCAR英国編集部のテストドライバーたちが待ちきれないのは、最も運転が楽しい最高のドライバーズカーを選ぶ毎年恒例の特集「ブリテンズ・ベスト・ドライバーズカー(Britain’s Best Driver’s Car)」である。英国で販売されているクルマの中から特に刺激的なものを集め、性能の限界までテストするという内容で、1989年から開催されている。 【写真】60年代に欧州が生んだ「マッスルカー」【フォード・タウヌス20M RSを写真で見る】 (22枚) それ以前の1960年代には、トタルオイル社のPR部門がシルバーストーン・サーキットで「外国車テストデー」というイベントを主催していた。英国車が国内市場を独占していた当時、イタリア、ドイツ、フランス、米国、日本、東欧のクルマが万華鏡のように一堂に会した。 最初のレポートは1963年に掲載されたもので、アルファ・ロメオの新しいフラッグシップセダンが主役となった。テストに参加したAUTOCAR誌の当時の記事を少し振り返ってみたい。 「2600(直列6気筒)は非常にスムーズで静かなため、回転計から目を離さないようにしなければならない。乗り心地と挙動は独立懸架式サスペンションのような先進的な一面を見せるが、実際にはコイルスプリング付きのライブアクスルである」 一方、クーペの2600スプリントは「ハンドリングが非常に優れているが、高速でコーナリングすると、片輪がほぼ浮きそうになる」という。 また、新型のメルセデス・ベンツ230 SLも際立っており、「路面の状態が良くても悪くても、非常に俊敏で快適なクルマである」と評された。 アバルト1000 TCは、フィアット600の強化版で、「直線で160km/hまで加速するスピードだけでなく、リアエンジン特有のオーバーステアをまったく見せずに驚異的な路面追従性を発揮し、ドライバーたちを驚かせた」 そして、フォードは巨大なギャラクシー500XLクーペで編集部員を喜ばせた。「高速コーナリングではよく傾くが、わずかなアンダーステアで安定したハンドリングを実現している。300psの出力とスムーズな自動変速により、軽快に走り回り、非常に軽いパワーステアリングにもすぐに慣れることができた」 唯一残念だったのは、実はフェラーリだ。マラネロは250 GTを送ってきたが、運転させてくれなかったのだ。そりゃ拷問だろ! 1964年、アルファ・ロメオが再び編集部員の心を奪った。今回は2台の新型ジュリアで。 「コンパクトでスタイルが良く、あらゆる面で魅力的なスプリントGTクーペは、性能とハンドリングもそれに劣らない。 限界ギリギリの走行でも、まったく従順で、予測可能な挙動を示し、ドライバーに最高の信頼感を与えてくれる」 「113psのジュリアTZは、軽量アルミボディと切り詰められたリアエンドにより、レーシングクーペに近いものとなっている。ハンドリングに不慣れなドライバーにとっては、高速コーナリングにはスプリントGTよりも注意と熟考が必要だが、これは高速走行も可能であることの裏返しでもある」 また、BMWのノイエ・クラッセの1800 Tiにも魅了された。「ハンドリングは極めて確実で反応が良く、タイヤのグリップ力も素晴らしい。ステアリングは正確で反応が良く、流行のスタイルよりも少し重厚に感じるかもしれないが、その分、性能が劣るということはない」 続いて1965年。「ジュリア・スーパーは、サーキットで本当に楽しめる数少ないセダンの1つである。他のアルファ・ロメオと同様、コーナーを急ぐと大きく傾くが、ステアリング特性はニュートラルを維持し、スキール音もなく、まるで吸盤のようにグリップする。リアアクスルが生み出す驚くべき成果である」 「ジュリアGTCは、屋根を切られたスプリントGT以上の何かを感じさせる。コーナーでのグリップは、本来あるべき以上のものがあるように思える。全力で走ると、外側のリアサスペンションがバンプストッパーに当たっているように感じられた」 フォードにも感銘を受けたが、マスタングはいまいちだったようで、「積極的なコーナリングではかなり不安定に感じられた。サーキットではまずまずだが、狭い道や雨の日はまるで役立たずだ」とある。印象的なのはドイツ生まれのタウヌス20Mだった。「非常にスムーズで扱いやすいV6エンジンは、130km/h近くまで3速で回る。ハンドリングは極めて良好で、ロールはほとんどなく、ニュートラル特性も良好なので、コーナーで正確をセットアップできる」 そして、チューナーのラッドスピード(Ruddspeed)が手掛けたボルボ131は、「大規模な改造によってクルマが高速な疑似GTに変身する様子に目を見張るものがあった。ハンドリングは素晴らしく、正確なステアリングと優れた減衰のスプリングを備えていた」という。 1966年に際立っていたのは、やはりアルファだ。「ウルトラワイドなホイールがジュリア・スプリントGTAに優れたグリップと絶妙なバランス感覚のハンドリングをもたらし、終日、興奮を掻き立てるような音を奏でていた」 1967年になると、メルセデス250SE、メルセデス250SL、BMW 2000 CSクーペが称賛を浴びたが、最も注目すべきはスーパー90を擁するアウディだった。 「最も安全なクルマの1つ。ハードなコーナリングでは、過剰なアンダーステアを打ち消すために、何度もロックさせながら走った。速く、快適で、挑発しないクルマだ」 残念ながら、非常に高価なイソ・グリフォ・ルッソは試乗できなかった。別のジャーナリストがコンクリートの壁に突っ込んでしまったからだ……。 最後のテストは1968年に行われたようで、アルファはついにトップの座をフィアットに奪われた(とはいえ、1750ベローチェ・スパイダーは「常に爽快」と評された)。「124Sのグリップ限界を見つけられたテストドライバーはいなかった。コーナリングパワーは無限大のように思えた。」 60年代を振り返るのに、色眼鏡は必要ない。
クリス・カルマー(執筆) 林汰久也(翻訳)