イビデン、増産後も供給ひっ迫可能性-エヌビディア向け基板独占
(ブルームバーグ): 米エヌビディアに人工知能(AI)サーバー向けICパッケージ基板をほぼ独占供給するイビデンの河島浩二社長は、2025年もAIブームが続き、現在同社が進める大規模な増産投資後も需要に供給が追いつかない可能性があるとの見方を示した。
河島氏は20日のインタビューで、「少なくとも25年は、このAI需要は続く気がしている」と述べた。生産した全量をあるだけ持ってきてほしいといわれるほど旺盛な需要に応えるため、同社は岐阜県内に基板工場を整備中だ。ただ稼働後も供給がひっ迫する可能性はあり、顧客との「次のキャパシティー拡大をどうするかの話し合いは既に始まっている」と明らかにした。
イビデンはAI半導体の世界最大手、米エヌビディアのAIサーバー向けICパッケージ基板を供給する現時点で唯一のメーカーで、先端半導体サプライチェーンにおいて重要な存在だ。同基板は半導体と配線板との間で電気信号を伝えるために使用される部品で、半導体の高機能化に伴って基板の機能向上も求められている。
現時点でAIサーバー向けは好調に推移するが、懸念もある。河島社長は25年にも海外メーカーがエヌビディア向けの基板供給に参入するという話を聞いているほか、AI特需がいつまで続くか不安もあるという。ICパッケージ基板のうちAIサーバー向けの比率は今期3割程度で、来期も3-4割程度の見通し。
とはいえ、東洋証券の安田秀樹アナリストはAIサーバー向けなどの「最先端チップは熱変形に対する耐性などの要求が高く、新規参入がエヌビディアが満足できる質と量を最初から入れられる可能性は低いだろう」と指摘。イビデンに大きな影響はなく、見通しは明るいと述べた。
イビデン株は30日午前の取引で、一時5.5%高の4855円を付けた。
育ての親インテル
1912年に設立し、岐阜県大垣市を中心に事業を展開するイビデンがICパッケージ基板メーカーとしての存在感を高めたのは、93年に共同開発を始め、96年に量産を始めた米インテルとの取引がきっかけだった。当時米国に駐在していた河島氏はインテル本社に日参し、守衛室の横で社員をつかまえてはフィードバックを聞き取ってきたという。