商社船舶部出身者が海外船社へ。海運業界人材の流動化が活発に
商社船舶部は過去、船舶保有業に進出し、いわゆるアセットビジネス(船舶資産の売却)で収益を上げた時期もある。
19―21年には市況下落に伴い安値で購入した中古船を市況上昇とともに売船、円安の追い風もあり船舶部として過去最高水準の利益を計上した会社もある。
しかし、今後の商社船舶部の戦略は各社まちまちだ。
保有船事業は新造船や中古船価格が安い場合にキャピタルゲイン(船舶の売却益)の原資となる船舶を購入できる。足元のような高船価では新造船を発注しても「赤字で保有を続ける懸念が高い」(船舶部関係者)。
中国造船所の台頭で一部の商社は中国造船所への仲介ビジネスを進める。中国は現在、不動産市場の不振で中国政府が外貨獲得のために海運、造船事業を後押ししている。
それでも仲介業だけでは現在の総合商社が求める利益水準を確保するのは難しい。
一方、個人ブローカーも台頭している。
海外船社はこうした個人ブローカーの人材も引き抜くなど、日本での活動を活発化させている。
海運では大手海運も数人から数十人規模で毎年、中途採用で人材の確保を進めている。海外船社と日本の海運大手は人材確保という点で、共通の課題を持つ。
海外船社の日本拠点の新設は、海外船社が自社の人材で日本の海運業界に参入することを意味する。
今後、さらに海外船社の日本拠点の拡充が進めば、日本の商社船舶部、海運、ブローカーの人材の流動化が増す可能性もある。
日本海事新聞社