南アフリカ総選挙で与党ANCが「過半数割れ」の大敗…この結果は国際政治にどのような影響を及ぼすのか?
南アフリカで、5月29日に下院の総選挙が行われ、与党のANC(アフリカ民族会議)の議席が過半数を割った。その結果、連立協議が必要となっている。今後、南アフリカの政治は安定するのだろうかーー。 【写真】欧州議会選挙2024で「右派勢力」「EU懐疑派」が伸張するこれだけの理由
総選挙の結果
南アフリカ連邦は1910年に成立したが、様々な人種差別政策が採用され、1948年にはアパルトヘイト(人種隔離政策)と呼ばれる政策が正式に法制化された。公共交通をはじめ公的な施設では、白人と非白人の分離が厳格に規定された。 1950年代後半には、この政策に抵抗する運動が、ネルソン・マンデラらが率いるANCを中心に開始された。 その後もアパルトヘイト廃止運動が国内外で高まり、デクラーク大統領は、1991年2月1日にアパルトヘイト関連法を廃止した。そして、1994年4月26日、全人種が参加する制憲議会選挙が実施され、ANCが大勝、マンデラが大統領に就任した。人口の8割は黒人である。 以降、30年間にわたってANCが政権を維持してきた。しかし、今回の総選挙では、ANCは400議席中159議席しか獲得できず、得票率は40.18%であった。前回の57.5%よりも約17%下回っており、議席数も71議席減らし、過半数を割った。 第2位は、白人を支持基盤とするDA(民主同盟)で、21.81%を得票し、87議席を確保した。この政党は、ビジネス志向が強い。 第3位は、汚職政治を行ったズマ前大統領が創設したMK(民族の槍)で、14.58%、58議席を獲得した。白人支配を批判し、ズールー部族主義を掲げるポピュリスト勢力である。第4位は、急進左派で黒人優遇策を提唱するEEF(経済解放の闘士)で、9.52%の票、39議席を得た。 その他、IFP(インタカ自由党)が17議席(3.85%)、PA(愛国同盟)が9議席(2.06%)、FF+(自由戦線)が6議席(1.36%)、ActionSA(アクションSA)が6議席(1.2%)、ACDP(アフリカ・キリスト教民主党)が3議席(0.6%)、これら以外の9政党が合計16議席を獲得した。