増える60歳以上の労災 2023年広島県、全死傷者の3割に
2023年に労災事故で亡くなったりけがしたりした60歳以上が広島県で975人に上り、全死傷者の28・8%を占めている。業種では製造業が最多。転倒によるけがが目立つという。60歳以上の事故は増加傾向にあり、働き手の高齢化と職場の安全対策の遅れが浮き彫りとなった。 【図版】全年齢に占める60歳以上の雇用者の割合 広島労働局によると、23年の県内の労災による全年齢の死傷者(新型コロナウイルスに関するものを除く)は3375人。ぬれた床ですべる、コードにひっかかるなど「転倒」が最も多かった。60歳以上でみても転倒は4割を超えて最も多く、「墜落・転落」、「動作の反動・無理な動作」と続く。 転倒事故の多さについて広島労働局は、人手不足や再雇用などを受けて労働者の高齢化が進んでいることが背景にあるとする。厚生労働省によると、働く60歳以上は23年に全国1138万人となり、この10年で1・4倍に増加。就業者の18・7%を占める。 広島労働局健康安全課の山埜典文課長は「職場環境は体に問題なく働ける人に向けて組み立てられがち。現場の高齢化が進む中、企業が対策すべき課題と捉えていない可能性がある」と指摘する。 労働局では今年4月、転倒災害のない職場を目指すプランを策定。手すりの設置や段差の解消など対策に取り組む事業所の割合を27年までに5割以上にするなどの目標を掲げる。広島産業保健総合支援センター(広島市中区)は、希望する企業を訪れて従業員一人一人の身体機能のチェックや職場の危険箇所のチェックなどに取り組んでいる。
中国新聞社