政府のマイナ保険証強行に反旗! 原告団事務局長が明かす「対応義務化訴訟」に踏み切った医療現場の実態
さまざまな懸念を抱えながらも、今月2日から法令上は、現行の保険証から資格確認書に代わるだけなのに、あたかも移行が義務であるかのように政府が誘導するマイナ保険証。国は医療機関にカードリーダーの設置や診療情報のセキュリティー強化などを義務付けているが、それらの負担により、泣く泣く廃業に追いやられる医師や医院は少なくない。 河野太郎氏がご乱心? 応援演説で聴衆に敵意ムキ出し「独裁政権」「工作員」のナゾ発言も 「マイナ保険証への対応義務化は違法」だとして、全国1415人の医師らが国を提訴。原告団事務局長の「いつき会ハートクリニック」佐藤一樹院長が訴訟の経緯を説明する。 「提訴した一番大きな理由は“医療情報の利活用化”です。国はマイナ保険証を入り口にして医療情報を集約。それを将来的には標準電子カルテ化し、民間企業にも利活用させる方針です。近年でも民間企業における情報の持ち出しや流出が後を絶たないことからも懸念はつきません」 先月28日に東京地裁は請求を棄却。原告側は控訴する方針だ。訴訟理由には医師らの深刻な廃業問題もあるという。 佐藤院長によれば、カードリーダーなどは国から無償で提供されるが、その他必要なソフトウエアの導入、光ファイバーを使用した回線費用などにも初期費用が必要。マイナ保険証の導入にあたり、佐藤院長も国からの補助金32.1万円を5万円ほどオーバーしてしまったという。 「情報保護のためセキュリティー対策にも毎月約1万5000円の費用がかかっています。すでに回線に必要な光ファイバーが通っているような都市部ならいざ知らず、地方などはわざわざ回線を通さなければならない医院もあります。さらにはマイナ保険証移行に伴う高額なレセプト(診療報酬明細書)コンピューターの導入が国から推奨されており、その費用が数百万円かかり、これを捻出できないため廃業に追い込まれた医院もあります」(佐藤院長) ■「医療情報漏洩」の責任を負わされる可能性 さらに深刻な問題は医療情報の漏洩だ。全国10万人以上の医師らが加盟する全国保険医団体連合会は「もし何らかの情報漏洩が起きた場合、責任はすべて医師や病院が負わされる可能性が高い」という。 「裁判では夫婦2人で経営している医院が、オンライン資格確認の義務化に伴い、オンライン化に必要な人件費が捻出できず廃業したことを陳述書として提出しました。今回のマイナ保険証の移行は医療界の意見を全く無視しています」(佐藤院長) 帝国データバンクによると、今年1~10月の医療機関の倒産件数は55件と過去最多に上る。マイナ強行で今後も廃業が続出しかねない。 ◇ ◇ ◇ 石破首相は2日の衆院本会議で、マイナ保険証のメリットについて、従来通りの主張を繰り返したが、「国民の不安払拭」の約束は岸田政権の時から反故にされ続けている。特に障害者や難病者など社会的弱者の懸念は置き去りにされたままだ。●【関連記事】『マイナ保険証は障害者・難病者を置き去り…取得・更新は「本人申請」、送付される資格確認書は廃止に含み』で詳報している。