「車いす社長」ヒントの介護付き旅行サービス始動から1年 その成果は?
春山家の旅行体験をもとに介護付き旅行サービス考案
独創的な介護機器サービスを提供するハンディネットワークインターナショナル(大阪府箕面市、春山哲朗社長、略称・HNI)が昨年2月、介護が必要な高齢者に専門スタッフ「トラベルケアアテンダント」(TCA)が寄り添う介護付き旅行企画「グッドタイムトラベル」を開始して、1年あまり。同社は重い障害と向き合いながら介護業界に新風を吹き込んだ故・春山満さんが創業。長男哲朗さんが事業を継承し、春山家の旅行体験をもとに、従来にはなかった介護付き旅行サービスを考案した。「家族みたいね」「また頼むわな」── 旅行を楽しんだ高齢者のさりげない感謝の言葉が、スタッフたちの背中を押す。
祖母は里帰りでくつろぎ孫は恐竜博物館へ
全国でも初めての本格的介護付きツアーのパイオニアとなったのは、TCAの大島美佐子さんと今仲学さん。ふたりともHNIやHNI関連会社に勤務し、春山満さん自身に薫陶を得た春山門下生だ。 満さんから自主独立の精神を学び、ふたりともそれぞれ新会社を立ち上げて、この新規事業に参画している。春山現社長のビジネスパートナーといってもいいだろう。 大島さんは昨年夏、関西から車で福井県へ向かう中井家の家族旅行に同行した。介護が必要な70代の康子さん、次男の浩之さんと、浩之さんの長男で康子さんの孫にあたる悠仁くんという家族3世代の一泊旅行だ。大島さんはつねに康子さんに寄り添い、車いすでの移動や身の回りの介助に打ち込む。2日目の福井では康子さんの姪も合流し、康子さんは思い出深いふるさとでのひとときを、心行くまで楽しんだ。 TCA効果は高齢者の旅への思いを叶えるばかりではない。大島さんが康子さんの介助に専念する間、浩之さん悠仁くん親子は、悠仁くん希望の福井県立恐竜博物館まで足を伸ばすことができた。憧れの恐竜たちと対面し、悠仁くんの目が輝く。 介助をTCAに委ねる時間を活用して、家族が別行動で自身の旅の目的を達成することも可能となる。心置きなく旅の非日常性にふれ、家族にもリラックスしてもらう。従来の介護トラベルにはなかった発想だ。