変革の波にあらがえなかったホンダ、独立路線を転換…日産との統合メリットは未知数
ホンダと日産自動車が経営統合に踏み切る。本田宗一郎氏による創業以来、「独立路線」を貫いてきたホンダも、電気自動車(EV)への移行など業界を襲う変革の波にはあらがえなかった。ただ、経営不振に陥った日産との統合にどれだけのメリットがあるのかは未知数だ。(中村徹也) 【図解】ホンダ株価の推移
「ホンダによる日産の救済と位置づけられ、ホンダの株価が落ちていると捉えている」。ホンダの三部敏宏社長は23日の記者会見で語気を強めた。
統合協議入りが報道された18日以降、日産株が上昇したのに対し、ホンダ株は低迷した。業績不振に陥った日産はリストラを強いられている。市場も、ホンダにとっての統合メリットを見通せずにいる。
ホンダは23日、2025年の約1年間で最大1兆1000億円の自社株買いを行うと発表した。自己株を除く発行済み株式数の24%にあたる大規模なものだ。自社株買いには、株価を上昇させる効果がある。
市場の懸念に応えるように、三部氏は統合の実現について「(日産のリストラ策の)実行が絶対的な条件」と強調。工場の相互利用による稼働率の向上や、部品の共同調達を進める方針を示した。系列に抱える部品メーカーを再編できれば、ホンダにとってもコスト削減効果は大きい。だが、部品会社を含めた再編は、一方の技術を捨てることにもつながる。「理屈は合っているが、現場は簡単には動かない」(金融関係者)との声も聞かれる。
三部氏は、「スケールメリットを生かすことによって、コスト低減や投資削減につながる」と訴えた。日産の内田誠社長も「(リストラを)断念したものではない」と述べた。
協議入りを後押ししたのは、世界で加速するEVシフトや自動運転化だ。
だが、ホンダは日本国内では乗用車のEVを販売しておらず、市場では懐疑的な見方が強い。
三部氏は「(統合の)相乗効果が出始めるのが2030年の手前、その効果を最大に刈り取るのは30年以降」と述べ、統合効果を出すまでに一定の年月がかかることへ理解を求めた。
ホンダは、本田宗一郎氏が1948年に浜松市で設立したことに始まる。国内外で自動車メーカー再編が相次ぐ中、ホンダは独立路線を貫いてきた。独立路線から転換するホンダと経営不振に陥った日産には、目に見える統合効果を生み出せるのかが問われている。