なぜプロボクシング界は緊急事態宣言の再発令を受けて興行自粛「推奨」の厳格方針を決定したのか?
プロボクシングのJBC(日本ボクシングコミッション)とJPBA(日本プロボクシング協会)による新型コロナウイルス対策連絡協議会が8日、オンラインで行われ1都3県に緊急事態宣言が再発令されたことを受けて、その期間中の対象地域での興行自粛を推奨することを決定した。すでにチケットを販売している興行もあるがICU、救急車などの医療機関を確保できた場合にのみ興行を許可し、原則無観客。客入れをする場合は1都3県を超える他地区へのチケット販売は認めず、午後8時までに終了することを条件とすることも決議した。 また各ジムの運営に関しても午後8時までに営業終了するなど行政の指導に従うことが要請された。 14日には、後楽園ホールで元WBC世界バンタム級暫定王者の井上拓真(25、大橋)が東洋太平洋バンタム級王者の栗原慶太(27、一力)に挑戦する注目の試合が予定されているが、医療体制を確保した上で終了時間を午後8時に早めて開催される。 昨年の一度目の緊急事態宣言時は、政府はイベントに対しての開催自粛を要請したが、今回の対象地域のイベントに対する政府指針は「入場者数の上限が収容人員の50%か5000人の少ない方」となっている。この方針に従えば、JBCとJPBAが昨年8月から再開させたガイドラインにのっとり人数を制限した有観客の興行は、今まで通りに続行してOKということになるが、今回、ボクシング界は、厳しく自主規制することになった。 この日の協議会では、「即刻、興行はすべて中止にすべき」という厳しい意見まで飛び交ったという。 JBCの安河内剛事務局長は「昨年の7月に興行を再開して、相当な試合数をこなして新型コロナの感染予防対策の経験、知見が積み上げられている。試合会場のクラスターも一度もない。ガイドラインを遵守して、なんとか今の興行を維持しようという結論になった」と説明した。興行自粛を「要請」ではなく「推奨」というレベルにとどまったが、実施には前出のような条件をつけ「今後、医療体制がより緊迫してきて、ICUや救急車が確保されない場合は、前日や当日の中止の可能性もある。もし興行を行う場合は、それだけのリスクを負うことになる」(安河内事務局長)との方針も固めた。 実質「興行はできる限りやるな」という厳しい決議である。 また1都3県以外の地域から遠征してくる選手が、感染を危惧して試合のキャンセルを希望する場合は、即時対応する方針で、すでに、鹿児島の選手からは、「東京にはいきたくない」との声が上がっているという。 ラグビー界は11日に新国立競技場で行われる大学選手権の決勝を有観客で行うことを決定、16日からはトップリーグが開幕するが、これも有観客で実施予定。高校サッカーも9日の準決勝、11日の決勝は無観客ながら開催される。イベント自粛を「推奨」するボクシング界の取り組みは、かなり厳格と言える。 なぜなのか。 安河内事務局長は、「ボクシングはコンタクトスポーツで感染の可能性が高い。サッカーやラグビーなどの屋外競技ではなく、屋内競技という特性もある。ボクシング界として医療機関の負担を考える意識も高い」と説明した。 ただ、一方で興行自粛の「推奨」となるとプロモーターへの経済的な打撃も大きくなる。これに対してJPBAは、昨年決定した支援制度を適用して自粛した場合の経済面の支援を行う方針。後楽園ホールは今年1月まではスライド開催する興行に関してはキャンセル料を免除してくれているという。 ここまで複数のジムでのクラスター発生や、京口紘人の世界戦の前日中止など、新型コロナに苦しめられ続けてきたボクシング界だが、緊急事態宣言の再発令を受けての対応は評価されていいだろう。