【少子化と高校野球】少人数だからこその責任感と練習量 宮城・黒川「単独チーム」で目指す聖地
少子化と高校野球<1> 社会問題でもある少子化は、高校野球界にも大きく影響を及ぼしている。日本高等学校野球連盟の調べによると、宮城県高等学校野球連盟への加盟校数(硬式)は08年度には80校だったが、24年度は69校にまで減少。休部や廃部、連合チームでの大会出場など、取り巻く環境は年々変化してきている。今できる最大限で甲子園出場を目指す高校球児の現状を、2回にわたって紹介する。第1回は黒川高。一時は連合チームを組んだが、今夏は同校の野球経験者3選手を助っ人として迎え、13人(マネジャー1人)の「単独チーム」で聖地への切符獲得に挑む。 ◇ ◇ ◇ 黒川は昨春と昨秋、4校連合(中新田、迫桜、岩ケ崎)で大会に出場した。大会前に合同での練習はほぼなく、休日の練習試合で顔を合わせる程度。そのため大会では勝利を挙げることができなかった。阿部裕太監督(38)は17年3月まで石巻工を指揮(12年センバツ出場時はコーチ)し、同年4月に黒川に異動。昨春初めて連合チームを率いたが「指示が通りやすいのはもちろん単独。普段の練習は一緒にしないので試合でもちぐはぐさが生まれる」と難しさを痛感した。 部員数が少なくても、聖地を目指す球児たちへの熱い指導は変わらない。同監督は「1人1人にかけられる時間が多くなった」。部員の多い学校では、1人に割く指導時間にも限度がある。少人数だからこそコミュニケーションを大事にし、相談しやすい環境をつくっているという。さらに「部員が多ければ休んだところでカバーする人がいる。だが人数が少なければそれができないので責任感が生まれる」と、社会生活で必要なことも同時に学んでいる。 選手にとっても、ひと味違う高校野球だった。佐藤建仁(たけひと)主将(3年)は、激しい競争をしながら聖地を目指す姿を思い描いていたが、現実はかけ離れていた。それでも「少ないからこそやれることがある」。豊富な練習量、コミュニケーションの取りやすさなどをプラスに捉え、チームを束ねてきた。「退部は1度も考えたことがなかった」と振り返る。 11人の部員で、単独で臨んだ昨夏は16強入り。今夏も助っ人の加入で単独出場となったが、これからも「連合」は視野に入る。主将は「今年も少ない人数だからこそ、昨年を超える成績を残せるように全員野球で頑張りたい」と力を込める。初戦は7月9日、宮城広瀬と対戦。困難と戦いながら着実に技術を身につけてきた黒川ナイン。野球は人数だけではないことを示し、3年生3人で守り抜いた伝統のバトンを後輩へとつないでいく。【木村有優】