独特な花形は“炎”のよう。個性派バイプレーヤー「グロリオサ」のブーケ&アレンジ
藤野幸信さんが選ぶ「季節の贈り花」 今、この花を贈りたい!
「フルール トレモロ」オーナー 藤野幸信さんが“今贈りたい”おすすめの花をセレクト。その花を使った、新作ブーケ&アレンジメントをさまざまなバリエーションでお届けします。 藤野幸信/Yukinobu Fujino 広島駅からほど近い段原の骨董通りにある「フルール トレモロ」オーナー。広島大学大学院理学研究科生物科学専攻を終了後、花の道に進んだ異色の経歴。著書『大切な人への贈り花』も好評。
9月の花「グロリオサ」
メキシコ料理店に周年記念の贈り花を、というオーダーをいただき、これは情熱的な朱赤のグロリオサをぜひ使いたいと思いました。おなじみの朱赤でも花が小ぶりなミニグロリオサの‘マスコット レッド’を選び、アンスリウム‘ウィスパー’やヒマワリ‘ホワイトナイト’、ケイトウ‘アスカセレクト レッド’を合わせました。フランボワーズやキイチゴ‘ベビーハンズ’をたっぷり加えてナチュラルな仕上がりに。
独特の花形と繊細なつる。個性派バイプレーヤーがおもしろい!
グロリオサはイヌサフラン科の球根植物ですが、旧分類ではユリ科とされ、「キツネユリ」「ユリグルマ」などの別名もあります。花弁が反り返る独特な花形は炎のようにも見え、エキゾチックな雰囲気が人気で、切り花では古くから朱赤の品種がおなじみです。最近では白やピンク、オレンジ色などの花色が増え、ほかの花との色合わせが幅広くできるようになりました。一年中何かしらの品種が出回りますが、熱帯エリア原産の花だけに暑い季節によく似合い、この時期には個性派のバイプレーヤーとしてよく利用しています。 花弁が反り返って花形がふんわりと立体的になるので、ブーケでもアレンジでもほかの花の上に載せるように挿し、花が潰れないように気をつけています。また、花だけでなく、葉の先端がくるっと巻いてつるになるのも動きがあっておもしろく、贈り花に加えるとぐっと楽しい表情になります。繊細なつるにたまらなく愛おしさを感じる私にとって、グロリオサはとても魅力的な花です。 さて、私がオーダーするグロリオサのほとんどは、高知県で栽培されたもの。調べてみると高知市の三里地区で栽培されるグロリオサは全国のシェアの70%以上を占めているそうです。ちなみに、朱赤の代表品種の一つ‘ミサトレッド’は、生産地の三里にちなんだ命名です。 また、最近、‘マスコット’というシリーズ名の花が小さめの品種が出回っていて、これがなかなか使い勝手がよいのです。こちらを生産しているのは、愛知県田原市にある「JA愛知みなみ」。ミニグロリオサのほか、黄色やオレンジ色など新しい印象のグロリオサを提供してくれます。 水あげがよく花もちのいいグロリオサは、暑い時期の輸送でも心配が少なく、それもこの時期によくグロリオサを利用する理由です。つるや葉を生かしたいなら、茎1本まるごと使えるブーケがおすすめです。