西野監督「信じられない」 先発9人全員、県内中学出身 快進撃の小松大谷
●西川完封「実感湧かない」 「信じられない思い」。夏の甲子園で14日、大阪桐蔭を3対0で下した小松大谷の西野貴裕監督は試合後、思わずそう吐露した。生徒やOB、家族らであふれたスタンドは過去9度甲子園を制した優勝候補を破ったナインに「本当に勝った」「こんなに強いとは」と沸き返った。全国から有望な選手をスカウトする強豪校が幅を利かせる中、小松大谷はスタメン9人全員が石川県内の中学校出身者で、「次の智弁学園も勝てる」とさらなる強豪撃破に期待を込めた。 【写真】完封勝利を挙げた小松大谷の西川投手 歴史的1勝を挙げた初戦以上の盛り上がりだった。八回裏を3者凡退で切って取ると「本当に勝てるんじゃないか」とアルプススタンドがざわつき始め、勝利が決まると選手や生徒が抱き合って喜んだ。3年前に5番遊撃手で出場したOBで国学院大2年の吉田創登さん(20)は「ここまで強いとは思わなかった。本当にすごい」と後輩の奮闘をたたえた。 完勝と言える内容に西野監督は「いつもテレビで見ていた憧れのチームに勝ち、信じられない思いでいます」と驚きを隠さなかった。完封勝利を挙げた西川大智投手(3年)も「実感は湧かないけど、やってしまったんだな、という気持ち」と振り返った。 スタンドでは、強豪に挑むナインを少しでも後押ししようと、応援団が懸命にエールを送った。 ●「オール加賀」で応援 吹奏楽部は部員39人にOB、小松、小松工、大聖寺、大聖寺実、加賀の各高校の部員、地域の楽団員が加わり、約90人と倍以上の大所帯に。小松高2年の新地咲希さん(16)は「選手は小松や加賀の子が多い。みんなワンチームという気持ちで応援した」とトランペットで盛り上げた。 担いで演奏する大型の金管楽器「スーザフォン」は星稜と小松工から計5台を借り受けた。演奏した小松大谷1年の芝田朱里さん(16)は「一番遠くまで音が届く楽器。貸してくれた学校の思いも一緒に選手に伝われば」と話した。校名にあやかって大リーガー・大谷翔平選手の日本ハム時代の応援歌と、スクールカラーが同じ奈良大付属高のチャンステーマ「青のプライド」をこの日のために練習し、初披露した。 2年連続で北信越大会を制したチアリーダー部は22人の部員がスタンドに陣取った。3年の小川結菜キャプテン(18)は「全国大会と同じくらいの晴れ舞台。選手も自分達も元気になれるように気持ちを込めて応援した」と勝利を喜んだ。 ●家族も見守る スタンドでは家族も熱戦を見守った。西川投手の母正子さん(52)は試合前「楽しんで思いっきりやってきて」と励ますと、西川投手からは「お」と一言だけの返事。試合後は完封勝利を挙げた息子に「すごい、サイコー、かっこいい」と手をたたいて喜んだ。 西川投手をリードした捕手・東野達(いたる)主将(3年)の妹聖(きよら)さん(10)は兄の出場する試合をほぼ毎試合観戦している。球場に訪れた試合は負けたことがない「勝利の女神」で、「自慢のお兄ちゃん。本当にかっこいい」と兄の活躍に目を輝かせた。