2024年話題の映画総まとめ『あの花』『変な家』『コナン』『あぶ刑事』『キングダム』『ラストマイル』『推しの子』など
■『ラストマイル』シェアードユニバースという新たな鉱脈
ドラマ『アンナチュラル』(2018年)と『MIU404』(2020年)の世界線(ユニバース)を共有(シェアード)した映画『ラストマイル』が、59.1億円の大ヒット(東宝発表、2024年12月22日時点、122日間成績、上映中)。 それぞれ大ヒットした『アンナチュラル』『MIU404』を手がけた、監督=塚原あゆ子×脚本=野木亜紀子×プロデューサー=新井順子のタッグによる完全オリジナル。主演は満島ひかり、共演は岡田将生、ディーン・フジオカ、阿部サダヲほか。さらに、『アンナチュラル』から石原さとみ、井浦新、『MIU404』から綾野剛、星野源らが出演している。 『アンナチュラル』や『MIU404』の続編を待ち望んでいたファンがを取り込みつつ、自由度の高いオリジナル脚本で、より多くの人がシェアできるような社会派エンターテインメントをつくり上げ、単なる人気ドラマの続編映画以上の反響を呼んだ。 ■『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『変な家』ヒットの共通点 『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は「泣ける!」、『変な家』は「怖すぎる」と、ともにSNSによって若い世代を中心に爆発的ブームを起こした。映画のヒットとともに、原作小説も売り上げを伸ばした点でも共通していた。 映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、TikTokで話題となり、「初めて本を読んで泣いた」「号泣してやばい」「同じ世代の人たちに読んでほしい」など、10代を中心に人気となった汐見夏衛氏による原作小説(スターツ出版文庫)を、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年後期)をはじめ主演作が相次ぐ福原遥、同連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年後期)に出演していた水上恒司のダブル主演で映画化した作品。現代の女子高生と、戦時中の特攻隊員との時を超えたラブストーリーが、興行収入45.2億円(興行通信社調べ、2024年12月22日時点)のヒットとなった。 2023年12月8日の公開直後からSNSでは「人生で一番泣いた映画」「名作すぎてどうしよう」「全人類に観てほしい」などと、感想が多数投稿され、「泣ける」という口コミが広がった。TikTokでは、映画公式アカウントの投稿を含め、さまざまなユーザーが『あの花』関連の動画を投稿。各動画にコメントがつき、そのコメントに「いいね」やさらにコメントがついて…と、プチバズりが続出。SNSでの「泣ける」という口コミで良さが伝わり、実際に「泣けた」ことで次の口コミにつながって広がり、「泣ける」作品を求める客層をしっかりつかんだ。 原作小説も映画化発表時点(2023年5月)ではシリーズ累計発行部数50万部だったが、発表後に急伸。映画公開後はさらに売り上げを伸ばし、出版元は2024年1月10日にシリーズ累計発行部数100万部突破して、102万部となったことを発表した。 一方、映画『変な家』は、白い仮面をかぶった謎のクリエイター・雨穴(うけつ)氏によるYouTube動画から始まり、その前身である同タイトルのウェブメディア記事を元に書籍化、漫画化もされてきた、一軒家の変な間取りにまつわるホラーミステリーを、間宮祥太朗、佐藤二朗らの出演で映画化。興行収入50.7億円(東宝発表、2024年12月23日時点)の大ヒットとなった。 “ゾクッとミステリー”という宣伝文句だけで内容をほとんど明かさず、完成披露試写会も行わずに初日を迎えたところ、SNSでは賛否両論ありながらも、「怖すぎて退出」「怖すぎて初めて途中退場した」といった感想が多数投稿された。TikTokでは「#変な家」がついた動画が多数投稿され、「怖すぎる」という口コミが広がり、メインターゲットのティーンや若者世代が「怖いもの見たさ」で劇場に足を運んだ。 さらに、『変な家』には『犬神家の一族』や『八つ墓村』などの名作ホラーを彷彿させる要素もあり、主演の間宮や佐藤、共演の川栄李奈らに加え、根岸季衣、高嶋政伸(※高=はしごだか)、斉藤由貴、石坂浩二らベテラン俳優たちの怪演もあり、元になったYouTube動画を知らない映画ファンやホラーファンの支持を獲得することにも成功。 雨穴氏の小説シリーズも今年最大のヒット作となった。『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社/2023年12月15日発売)は、今年の『オリコン年間“本”ランキング』の単行本などの一般書籍部門「BOOKランキング」で、期間内(※)売上74.4万部で1位を獲得。また「文庫ランキング」においても、『変な家 文庫版』が期間内(※)売上58.1万部で首位となり、2冠を達成した(※実質集計期間:2023年11月20日~2024年11月17日)。