映画監督による性暴力の被害女性を演じる、子役出身23歳女優「SNSがない時代に生まれたかった」
自分と向き合う時間には第三者に伝えることが大切なことも
――この作品に触れたことで、新たに気づいたことはありますか? 山口:乃愛は自分の過去の嫌な記憶をずっと抑え続けてきました。それが、シェアハウスに住むことになり、自分と同じようにトラウマを持つ女性たちを助けたり、話を聞いたりすることで、自分自身の気持ちとも向き合っていたのかなと。 自分で自分を慰めてあげることができるようになったのが乃愛の一番の成長で、なにより“自分と向き合う時間というのがとても大切なことなんだ”ということを、教えてもらいました。 ――自分自身と向き合う。 山口:はい。そこに深く向き合って、はっきりと見つめていくために、第三者に伝えていく瞬間が必要になってくるかもしれない。 そういう決断を出さなきゃいけない時があると、この作品を通じて感じました。
解決方法じゃなくて、ただ寄り添ってほしかった
――第三者に伝えることで、より深く自分と向き合うことができると。ちなみに本作では、乃愛は被害に遭って弁護士でもあるお兄さんに相談します。でも、お兄さんは現実を知っているからこそ、「裁判は難しい。負けると思う」と答えてしまいます。 山口:みんな乃愛のことを助けようとしてくれているし、悪い気持ちを持った人はいない。兄も助けようとしてくれているけど、乃愛が求めているものとは違った。 あのとき、乃愛は解決方法じゃなくて、ただ“つらかったな”と寄り添って欲しかっただけだと思うんです。だけど兄は現実を知っているからこそ、解決策を考えた。 誰も悪くないけど、あのときは食い違ってしまったんですよね。
以前は「自分の足で立たなきゃ」との意識が強かった
――ところで山口さん自身が、自分を見つめて成長できた時期はありますか? 山口:乃愛とは全く状況が違いますが、私も自分の気持ちを隠したり本当の気持ちを言わないことが結構ありました。 小さい頃からこの業界に入っていたからか、自分の足で立たなきゃいけないという意識が強かったんです。 でも最近になって、それだとせっかく手を差し伸べてくれている人に対してすごく失礼で、そんな生き方を続けていたらこの先だれも助けてくれなくなるかもしれないと感じ始めました。 それで人に甘えたり、委ねたりすることも大事だと思うようになりました。