話題の「セリフなしアニメ映画」スペイン人監督と日本人妻を直撃。夫婦円満の秘訣は“異常なまでの映画愛”
観客の涙腺が崩壊!? ミニシアターランキングで動員1位を獲得
第96回米国アカデミー賞®長編アニメーション映画賞にノミネートを果たし、宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』と競い合い、名だたる映画賞を席巻した『ロボット・ドリームズ』。1980 年代のニューヨークを舞台にドッグとロボットの友情を描き、世界中を涙と感動で包み込んだ話題作が11月8日に封切られた。 監督を務めたのは、『ブランカニエベス』(2012)で第27回ゴヤ賞10部門を受賞したスペインの名匠パブロ・ベルヘル。ミュージックエディターの妻・原見夕子とともに来日を果たしたパブロ監督に、アニメ初挑戦への思い、さらには、「クリエイター同士の結婚は続かない」という定説などどこ吹く風、夫婦円満に作品を作り続ける秘訣を聞いた。
全編セリフなしで初のアニメーション映画
――実写映画の経験しかなかったパブロ監督が、アニメーション映画に挑戦したいと思ったきっかけは何だったのでしょう。 パブロ監督:アメリカ人作家サラ・バロンが描いた切なくも温かいグラフィックノベルに出会ったことが理由です。最初はドッグとロボットのユーモラスなやりとりを微笑ましく思っていたんですが、ロボットと離れ離れになるという辛い局面にぶつかったドッグが、それをどう乗り越えていくのか…そんなことを思いながら作品の世界に浸っていたら、いつの間にか感動して泣いていたんですね。しかもこのグラフィックノベルにはセリフがなく、絵の力だけでここまで感情を動かされたことにも驚かされた。これは何としてでも映像化し、映画ファンの皆さんにも彼らの友情と絆の物語をお伝えしたいと思いました。 ――全編セリフなしで初のアニメーション映画というところは大きなチャレンジだったのではないでしょうか? パブロ監督:前作『ブランカニエベス』もサイレント映画でしたが、私の場合、「映像で伝えたいことを表現する」というスタイルが自分の中心にあるので、挑戦というよりも喜びを感じながら制作に臨んだという感じです。ただ、アニメーションに関しては、確かに新しい経験の連続でしたね。特にチャレンジングだったのは、アニメーションスタジオを作ったことですね。 ――え?この映画のためにですか? パブロ監督:そうなんです。もともとはアイルランドのアニメーション制作会社と一緒に組んでやろうと思っていたんですが、 コロナ禍で思うようにできなくなったので、プロデューサーと相談して、「いっそのことスタジオを作ってしまおうか」という話になって。ポップアップスタジオと言っているんですが、とにかく突貫工事だったので、それが一番大変でしたね。ただ、演出に関しては、役者からアニメーターに変わっただけなので、比較的スムーズに行きました。つまり、アニメーターが作ったアニメを観て、自分がどれだけ心を動かされたか…そこは役者と同じですから、自分の中にある感情の“探知機”に従ってディレクションするだけでした。