話題の「セリフなしアニメ映画」スペイン人監督と日本人妻を直撃。夫婦円満の秘訣は“異常なまでの映画愛”
監督の妻は、日本人でミュージックエディター
――妻である原見さんはミュージックエディターとして参加されたわけですよね? 全編セリフがないだけに音楽が担う役割も大きかったと思います。 原見:そうですね、この作品はとても普遍的なテーマでありながら、一人一人それぞれの人生に寄り添うようなお話ですから、音楽が前に出すぎて目立つようなものにはしたくなかったんです。だから、ここはちょっと楽し気なところとか、ここは泣くところとか、観客を誘導する押し付けがましい音楽は一番避けたかった。パブロのサイレント作品は映像だけで十分面白いし、十分感動するし、十分話も伝わるので、「音楽があるとより魅力的な作品になるね」くらいでちょうどいいのかなと。 ――押し付けがましさは全くなかったです。自分の感情のおもむくままに泣いたり、考えたり、嬉しくなったり…音楽に誘導されたという感覚はなかったです。 原見:それは嬉しい感想ですね、良かったです! 私の目標は達成できたってことですね。
奈良公園で鹿におせんべいをあげた
――原作の舞台は、アメリカの名もなき場所ですが、それをあえて大都会ニューヨークにしたのはなぜですか? パブロ監督:ニューヨークに10年間住んでいたことがあり、とても思い出深く、いろんなことを経験し、学んだ街。夕子と運命的に出会ったのもこの街なので、ニューヨークへのラブレターみたいな作品にしたかったんです。 ――お二人のなれそめをお聞きしてもよろしいでしょうか? 原見:年齢は3つしか違わないんですが(パブロ監督が3つ上)、彼がニューヨークフィルムアカデミーの講師で、私はその生徒でした。彼が日本贔屓だったわけでもなく、私もスペインにそれほど興味があったわけではなかったので、本人同士の相性が良かった、ということでしょうね。 ――ご結婚されてからは、パブロ監督も日本にすごく興味を抱いたんじゃないでしょうか? 原見:私の故郷である奈良県に行って、私の両親も交えてお茶(茶道)を嗜んだり、奈良名物のかき氷(抹茶味)を食べたり、奈良公園で鹿におせんべいをあげたり、そこで少し日本に触れることができて大好きになったみたいですね。今では日本の食べ物と洋服に目がありません。ユニクロも好きでよく着ていますよ(笑)