『インサイド・ヘッド2』北米で『アナ雪2』超えの新記録 “どん底”だった映画興行に光
ディズニー&ピクサー映画『インサイド・ヘッド2』が、アニメーション映画として史上最速で全世界興行収入10億ドルを突破した。これまでの歴代記録は『アナと雪の女王2』(2019年)の公開25日後だったが、本作は大幅に数字を縮めて19日後の達成となった。 【写真】新しい“感情”に戸惑うヨロコビたち 6月28日~30日の北米週末興行収入は5740万ドルで、3週目もランキングのNo.1をキープ。前週比マイナス43.3%と、相変わらず下落率もさほど大きくない。北米興収は4億6930万ドル、海外興収は5億4550万ドルで、全世界累計興収は10億1480万ドルとなった。 コロナ禍において、ピクサー映画は『ソウルフル・ワールド』(2020年)や『あの夏のルカ』(2021年)、『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)の劇場公開が見送られ、『バズ・ライトイヤー』(2022年)と『マイ・エレメント』(2023年)も興行的に苦戦した。すなわち『インサイド・ヘッド2』の歴史的ヒットは完全に予想外だったのだが、2023年の全米脚本家組合&全米映画俳優組合のストライキで大きなダメージを受けた映画館業界は、こうした社会現象のようなヒット作を長らく待ち望んでいたのだ。 全米劇場所有者協会のマイケル・オリアリー会長は、本作の10億ドル突破を受け、「我が国の、そして世界中の映画館オーナーを代表し、『インサイド・ヘッド2』が史上最速で興行収入10億ドルを達成したことをお祝いします。この世界的な大成功は、全世界の観客が魅力的かつ面白い映画に反応し、大スクリーンで楽しみたいと考えていることを改めて示すものです」との声明を発表した。日本公開はちょうど1カ月後の8月1日だ。 ランキングの第2位には『クワイエット・プレイス:DAY 1』が初登場。惜しくも『インサイド・ヘッド2』には敗れたが、週末3日間で5300万ドルを記録し、シリーズ史上最高のスタートとなった。事前の予測では4000万ドル程度とみられていたため、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』や『インサイド・ヘッド2』に続き、またもや予想外のヒットである。 本作は「音を立てたら、即死」のフレーズで話題を呼んだサバイバル・ホラー『クワイエット・プレイス』シリーズの前日譚で、大都市ニューヨークを舞台に、すべてが始まった日を描いた一作。過去2作を手がけたジョン・クラシンスキー監督がプロデュースに回り、主演のエミリー・ブラントも登場しないという条件下にもかかわらず観客の関心を集められたのは、それだけシリーズのコンセプトが支持されているということだろう。 海外興収は4550万ドルで、世界興収は早くも1億ドルに近い。製作費は6700~7000万ドルと報じられているため、ビジネス面でも劇場興行のみで優れた結果を示すことができそうだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア84%・観客スコア73%、劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでも「B+」評価と、賛否の分かれやすいホラー作品としては高い支持率を示している。Z世代が劇場に足を運んでいることも含め、今後の推移にも期待できそうだ。 監督は『PIG/ピッグ』(2021年)のマイケル・サルノスキ、出演はルピタ・ニョンゴ&ジョセフ・クイン。日本でも6月28日より劇場公開中である。 なお、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』と『インサイド・ヘッド2』、そして『クワイエット・プレイス:DAY 1』の連続ヒットにより、北米映画市場の年間興行収入(同時点)は、前年比79%から81%へと再びその数字を縮めた。ストライキのため今後の公開作品にも大きな影響が出ているため、決して「これで今年も安泰」などと言える状態ではないが、まぎれもなく“どん底”だった初夏の空気はひとまず払拭されただろう。